ホロコースト 戦争と家族

『ホロコースト』 再放送

昨年の10月ごろ、マイケル・モリアーティ氏の定期投稿に「この記事はこれから1か月お休みします」とアナウンスがありました。「ヨーロッパへ行って『ホロコースト 戦争と家族』関係のドキュメンタリー制作に協力する」とのこと。 協力先としてアリス・アグネ…

『ホロコースト』 ディスク4 ベルリン 1943年

エリック・ドルフのスライドフィルム上映会、以前はハイドリヒに対して行っていましたが、今回はアウシュビッツの写真をカルテンブルンナーに見せています。移送列車の到着から選別、特殊処理、焼却炉。カルテンブルンナーは特段の印象を受けた様子もなく、…

『ホロコースト』 ディスク4 テレジエンシュタット

前の場面の続きです。長官室にエルンスト・カルテンブルンナーが入ってくる。ハイドリヒの死後、RSHA長官のポストを継いだのです。暗殺前のハイドリヒが「そこら辺のちんぴらと変わらん」と言っていた通りの粗野な人物であり、そのことを隠そうともして…

『ホロコースト』 ディスク4 ツィクロンB

ヘウムノの場面で「ドイツの化学の力を借りる」と言っていたエリック・ドルフが、民間の会社の研究所を訪ねてきています。今回の任務はツィクロンBの調達です。前の幕で涙を流したエリックは、この場面では泣きやんだばかりの子供のような表情をしています…

『ホロコースト』 ディスク4 ハイドリヒ暗殺

『ホロコースト』やっとディスク4に入りました。ベルリンの親衛隊本部に、アウシュビッツの司令官ルドルフ・ヘースが呼ばれて来ていて、ヒムラーから収容所を拡張する任務を与えられる。この場面の会話については時代背景3/3の記事で既出です。もう一年…

DER SPIEGEL 1979年1月29日号

出版物ネタですが、こんどは読めもしないドイツ語です。デア・シュピーゲルといえば、米国のタイムやライフにも匹敵するメジャーな雑誌。これの1979年第5号(1月29日付)の表紙はごらんの通り、親衛隊の制服を着たマイケル・モリアーティの大写しです。http:…

『ホロコースト』 ディスク3 ヘウムノ

前の幕では、銃殺隊の非効率さに気づいたヒムラーから、もっとましな方法を探すよう命令が下りました。ユダヤ人問題の最終解決のため、効率的で人手のかからない、いわば産業的な手法を開発しようというのです。エリック・ドルフはその命令に従ってポーラン…

『ホロコースト』 ディスク3 ミンスク

アインザッツグルッペBの司令官ネーベ大佐が、親衛隊国家指導者のヒムラーを銃殺隊の視察に連れてきました*1。ハイドリヒの頭ごしに手柄を狙ってのことでしょうが、ネーベは気の回らない人物なうえ、ヒムラーは「腰抜けの養鶏屋」*2で、この企画はとうぜん…

『ホロコースト』 ディスク3 ヴァンゼー会議

1942年1月のヴァンゼー会議の幕です。しかしこのドラマはもともとけっこう脚色が入っており、かならずしも史実通りではありません。ヴァンゼー会議については、リィンさんに教えてもらって買ったTV映画作品があり、会議のアウトラインについてはそちらの方…

『ホロコースト』 ディスク3 1941年のクリスマス

ベルリン、1941年のクリスマス。このシリーズ全体で、ハイライトと言えるシーンは先日のバビヤールも含めていくつかあると思いますが、私が「戦争と家族」というテーマを強く感じるのがここです。そしてこの場面にはマイケル・モリアーティがカメラを見てい…

『ホロコースト』 ディスク3 バビヤール

この場面は、バビヤール(お祖母ちゃんの谷)へ歩かされるユダヤ人の長い列から始まり、ドルフとブローベルのドイツ側からだけでなく、列から抜け出して茂みに隠れたルディ・ワイスとヘレナという被害者の視点からも目撃されます。 少佐に昇進しているエリッ…

『ホロコースト』 ディスク3 キエフ

ちょっと前に、映画『ハンナ・アーレント』を観てきました。雨の日の朝から行ったにもかかわらず当日券売り場は長蛇の列で、もう少しで入りそこねるところでした。誰もいないんじゃないかと思ってたのに、関心が高いことに驚かされました。きっと、アーレン…

『ホロコースト』 ディスク2 最初の殺人

この場面から、エリック・ドルフは事務仕事を離れ、戦線後方に展開しているアインザッツグルッペンを巡回するようになります。(彼のモデルである実物のアドルフ・アイヒマンも、「独ソ戦開始後に上司のハインリヒ・ミュラーの命令でトレブリンカやリッツマ…

『ホロコースト』 ディスク2 アインザッツグルッペン1941年

アインザッツグルッペンとは、ナチ政権下のドイツで、保安警察によって何度か組織され、各戦線のすぐ後方に展開して敵性分子の排除と治安の確保に当たった部隊です。「排除」には銃殺やガストラックなどの手段が使われました。この場面に出てくるのは1941年…

『ホロコースト』 ディスク2 1939年のポーランド総督府

このシーンでは、エリック・ドルフがポーランド総督ハンス・フランクに会いに来ています。フランクはもともと法律家であり、ミュンヘン一揆の前からナチ党員で党の弁護士を務めていた古参。この人物について『アイヒマン調書』に次のような記述があります。1…

『ホロコースト』視聴率と反響

1978年制作の『ホロコースト』が及ぼした社会的影響がどれほどのものであったか、35年たった現在ではちょっと想像しにくいものがあります。このためウェブから拾ってきた数字を以下に挙げてみます。単位がばらばらなので比較がめんどうなんですが。あるサイ…

『ホロコースト』 ディスク2 1939年の舞踏会

ディスク2は1939年、ポーランド侵攻後の話になります。ハイドリヒ長官の執務室で、ドルフがスライドフィルムを上映して見せている。おそらくポーランド各地での、ユダヤ人の絞首や銃殺の様子。現地での散発的な処刑で、計画された大量殺戮ではないようです…

アイヒマンとドルフ

ドラマ『ホロコースト』のディスク2に移る前に、マイケル・モリアーティが「悪役は二度とやりたくないと思った」というそのエリック・ドルフの「悪」について整理してみます。この項目はハンナ・アーレントの『イェルサレムのアイヒマン』(1963年、大久保…

エリック・ドルフ

今週のモリアーティ氏の投稿記事は、タイトルが「アメリカン・ホロコースト」。いきなりハイドリヒの写真がでっかく載っていて、エリック・ドルフの名前が出てきたので驚きました。ま、まさかここ読んでないよね、マイケル。といっても主題はエリックじゃな…

『ホロコースト』 ディスク1 ウィーン、プラーター公園、1938年

『ホロコースト』ディスク1の残りです。ストーリーの流れと時代背景はこちらの記事。引き続き1938年のベルリン、ドルフ家のアパートメントのシーンから。子供たちが寝に行った後、ワイス医師が息子カールを助けてほしいと訪ねてくる。エリックは「何もでき…

『ホロコースト』 ディスク1 クリスタルナハト

『ホロコースト』ディスク1の中ほどは、「水晶の夜」前後のエリック・ドルフの変貌が中心になります。 1938年、ベルリン。ワイス医院をドルフが訪れます。目立たないように平服を着ていますが身分証には親衛隊中尉となっています。ワイス医師がアーリア人の…

『ホロコースト』 ディスク1 1935年のベルリン 

『ホロコースト』にやっととりかかりました。前に書いた通り、本筋はユダヤ人のワイス医師一家の受難の物語なのですが、そちらはあまりに重い上に、一家の人々はひたすら気高いまま死んでいくので感想の余地がありません。サイドストーリーとして描かれる、…

『ホロコースト』 時代背景 3/3

ディスク4 (第3部つづき)ヒムラーからルドルフ・ヘースにアウシュビッツを拡張する任務が与えられる。I.G.ファルベンが労働力を独占していて人手が足りない、とヘースが文句を言うと、ハイドリヒは奴らだって我々の恩恵を受けてきたんだから協力するは…

『ホロコースト』 時代背景 2/3

前回の続きです・・・やっぱりあまりに長いので3回に分けることにしました。ディスク3(第2部つづき)ワルシャワ・ゲットーの評議会。レジスタンスを語る者と、法律を守って生き延びたい評議会の対立。食料を闇で持ち込まないと生きていけないが、見つか…

『ホロコースト』 時代背景 1/3

先週に続きまして、ディスク5枚x各90分の前半のあらすじと時代背景を。【】内は自分でつけた注釈です。第1部 「たちこめる暗雲」 ディスク11935年、ベルリン。レストランの美しい庭園に響くアコーディオンの音色。ユダヤ人のワイス家とドイツ人のヘルム…

『ホロコースト』登場人物

1978年のテレビシリーズ『ホロコースト』のレビューを書きたいと思っているのですが、話が重いせいでなかなか取りかかる気になれない。これは無謀だったかも、と思い始めているところです。ただ一応通しては見たので、長くて重い話をある程度整理してみよう…

イーリアス

先日の記事とコメントで『ホロコースト』のエリック・ドルフの台詞を引用しました。その後、岩波文庫の『イーリアス』を読んだのでメモしておきます。親衛隊に入隊して初登庁の朝、黒服とブーツに身を固めた父親を息子が見て泣くと、エリックがこんな風に言…

『ホロコースト』

あんまりちゃんと観てないので軽くレビューです。 この作品で、マイケル・モリアーティは準主役の一人、親衛隊将校のエリック・ドルフを演じています。生活のため奥さんに言われてしぶしぶSSに入ったエリックは、ラインハルト・ハイドリヒに気に入られて腹心…