『ホロコースト』視聴率と反響

 
1978年制作の『ホロコースト』が及ぼした社会的影響がどれほどのものであったか、35年たった現在ではちょっと想像しにくいものがあります。このためウェブから拾ってきた数字を以下に挙げてみます。単位がばらばらなので比較がめんどうなんですが。

あるサイトでは、アメリカで推定7000万から1億2000万人が視聴した、とあります。米国の放送時の各エピソードの視聴率が30%前後、としているサイトもあります。前年の1977年に大ヒットしたミニシリーズ『ルーツ』の平均約45%には遠く及びませんが、それでも当時のワールドシリーズ並みの視聴率です。

ついでにいうとLaw & Order の推定視聴者数(NBC放送分のみ)は初期シーズンで1000万から1200万人。もっとも人気の高かった2001年頃で2000万人弱らしい。

Wikipediaにもそのように書いてあります。ホロコースト』はアメリカでは49%のシェアを獲得。(シェアは視聴率=レイティングとは違い、分母が「そのときテレビをつけていた世帯数」。視聴率は、分母が「テレビを所有している世帯数」)。

翌年の西ドイツでの放映は、50%の視聴率、推定2000万人を獲得した。この時には、1部ごとに歴史学者が視聴者の質問に答える形のフォローアップ番組が設定されており、そこに反応が殺到した。おおかたのドイツ人視聴者は、自分たちがホロコーストについてほとんど知らされていなかったことに怒って電話してきたのだ。

上の話は、社会的な反響が大きかったことを数字以上にはっきり示していると思います。アメリカにおいても、それまで大衆文化にホロコーストが登場したことはなかったようで、このドラマの放映は「ホロコーストの“アメリカ化”におけるターニングポイントであった」と、米国文化研究の論文にも書かれています*1

この「アメリカ化」には功罪の両方があるが、その後、大衆文化の中にホロコーストという文脈が形成されたことは間違いない。たとえばL&Oにもホロコースト関連のエピソードは繰り返して出てきますが、それをいちいち背景説明なしにストーリーにできるのは、このドラマをはじめとする作品が広く世に知られていることもベースにあるということです。

アメリカ化」とその功罪とはこういうことです。ホロコーストは米国内で起こったことではないので、直接記憶されているわけではない(ヨーロッパからの移民一世を別として)。フィクションであるテレビドラマはそこに「偽の安っぽい記憶を植えつける」という批判もある。しかし起こったことを薄くとも広く知らしめるという点でテレビの力は何よりも強い。あるいは真実をもっと深く知ろうという入口になるかもしれぬ。

いずれにせよ、当時の反響と後世に残した影響の大きさははかりしれない。それを考えると、マイケル・モリアーティの代表作は、というときに"Law & Order" ではなくこの作品を挙げてもいいんじゃないか、と思います。

日本ではどうだったのか?『ルーツ』は大きな話題で流行語にもなったと理解していますが、『ホロコースト』はそれほどでもないような?これも1978年のうちに放映されているらしいのですが。


ところで、私の持っている日本版DVDは5枚組なのですが、いろんな資料をみるとこの作品は4部構成となっています。どうやら日本版は容量の関係でむりやり5つに分割してあるらしい。というわけで今までの記事で第1話〜第5話としていたのは正しくないので、「ディスク1〜5」または「第1部〜第4部」という表記に変更しました。

また全体の長さもパッケージには90分×5=約450分と書いてありますがオリジナルは475分らしい。削除シーンがあるのかもしれないです。