"Dark Tower" 『ゴーストインフェルノ』

 
[追記] 邦題がわかったので記事タイトル変更しました。かつヒロインの名前も間違えてて、「キャサリン」じゃなく正しくは「キャロリン」でした。もう本当に脱力しててすみません。


えー、前の記事で予告していた作品です。もう評判通りの出来で、今日の記事はへろへろであります。

米国版のレンタル落ちVHSでした。内容も予想通りでしたがテープの状態もダメで。デッキに入れたときに「キーーー」という音が聞こえて、嫌な予感がしました。それでもいちおう最後まで再生することはできたんです。

ええ、「最後まで見た」とは言っておりません。そう、あまりのことに途中で意識が遠のきそうになり、旦那に「お願いだから一緒に見て」と頼んだけど断られ、無理やり目を開けながらモニターの前に座っておりましたが、やはりところどころ覚えていない箇所が・・・

ところが、再生し終わってみるとなんと巻き戻しがきかない。つまり、まだらにしか見ていないにもかかわらず、二度と見られない幻の作品となってしまったのです。こんなことなら、もっと真剣に観ておくんだったと後悔・・・軽くだけど。


さて、この幻の作品。オープニング・クレジットからして主演俳優の名前が間違っているというレア物であります。以下、もう何の配慮もなくネタバレですが、たぶん誰からも文句は出ないでしょう・・・

舞台はバルセロナです。でも登場人物はなぜかみなアメリカ人。完成間近の高層ビル設計者キャサリン(美女)が登場。オフィスで着替え中に窓掃除人に覗かれます。最初からあんまりな展開だわ。その窓掃除人は正体不明の何かに襲われ、ゴンドラから転落して死亡。偶然ながら『空の大怪獣Q』の冒頭と似ております。

警備会社に雇われているデニス・ランドール(マイケル・モリアーティ)、ガムを噛みながら相棒と登場。最初だけ、ヘラヘラしたモー・ラザフォード(『ザ・スタッフ』)みたいなキャラです。相棒のネクタイを引っ張ったり、明らかに台本にないことをやってふざけている。でもすぐサイコ・キャラに変身するんだけど。

オフィスにいるキャサリンに話を聞きに行くランドール。彼女が後を向くとその脚に見とれている。あの、モリアーティの「女に興味をそそられる」演技はいつも笑えるくらい説得力があって*1、その設定はよくわかるんだけどさ。でも初対面でふた言ほど会話した次のカットで二人一緒に寝ているのはあまりに唐突で、本当に起こったことなのか妄想なのかよくわからないです。

(追記: いま思うと、一緒に寝てるのは恋人だったかもしれない。なんかカットが唐突なのは間違いないんだけど・・・)

さらに次のカットでは、ランドールが「もう少し質問したくて」と言ってキャサリンのオフィスに戻って来ますが、着ているものがさっきと変わってるってことは別の日なのか?これも男か女どっちかの妄想なのか?そしていきなり彼女の服に手をつっこみ、デスクの上、彼女の死んだ夫の写真の前で・・・その最中にランドールは夫の姿を幻視します。最初のシーンと合わせて、これでほぼネタは想像つきます。ハイ、彼女の夫が幽霊となってビルに取り憑いているのですね。(簡単にばらすなよ、って感じだけど、バレバレなんだもん)

さて、ランドールがよろしくやってる間も相棒は仕事してます。ところが事故の調査でエレベーターに乗った直後、錯乱。ビルのロビーで拳銃を乱射して死傷者多数、みずからも警官に射殺される。

この辺からだんだん記憶が怪しくなってきました。ビルの警備員が夜の巡回中に殺される。やっぱりエレベーターに乗ったときに何かを見たらしい。ちなみにこの「悪のエレベーター」、しつこくしつこく画面に映りますが、階数ボタンが異常にたくさんあります。ぱっと見たところ20個x3列=60個くらいついてて、みんな乗った途端ワケがわからなくなって適当に押しまくる。そんな馬鹿な。ビルの外観はせいぜい20階建てなのに。

ランドール、恋人のつてで情報を探る。キャサリンの夫もまた設計家で、死んだというより行方不明になってるらしい。
ランドール、超常現象研究家マックス・ゴールドに会いに行く。ランドール自身も透視能力があることがわかる。
ゴールド、霊媒(ケビン・マカーシー)を連れてくる。ある晩、三人は悪魔祓いのためにビルへ赴く。(すみません。この辺、すでに意識が薄れていてよく覚えてません。)

マックス・ゴールド、地下?の機械室で空調装置と喋る。このシーンがある意味この映画のハイライトかも。だってビルの空調設備ですよ?そりゃ音だけは「ゴォーーシューー」とかダースベイダーみたいだけど、どんなにおどろおどろしく撮ろうとしても限界があると思うんですよ、普通は。だけどそれがなかなか迫力あるのね、他のシーンに比べると。

さてキャサリンはオフィスで仕事してました。そこを幽霊に襲われて飛び出し、廊下を逃げまどいます。途中で片足のハイヒールが脱げ、転がる。次のカットではまた両足とも黒い靴を履いています。階段から落ちて踊り場に倒れたところが映ると、今度はベージュ色の靴。この非常時にTPOに合わせてまめに靴を履きかえるなんて、お洒落さんですね(違うっ)

逃げてきた彼女は、空調装置の前で三人と出会う。霊媒を通じて夫がランドールに降霊してくる。キャサリン、夫殺しを告白。死体をコンクリート置き場に捨てたと。霊が暴れ、ゴールドはむきだしの電気配線にぶつかり感電。気がつくと霊媒も絶命してる。ランドールはミイラというかゾンビに変身。(ああ、マイケルが・・・)

またもや逃げ出すキャサリン。行く手の壁が崩れ、中からミイラ死体が現れる(あれ、ランドールに取り憑いてたんじゃないの?!)。ゾンビがキャサリンを壁に引きこみ、壁が元に戻っておしまい(クライマックスのわりにあんまり工夫のない逆回し映像。低予算だから仕方ないんでしょうね・・・)。

ラストシーン。ランドールはマックス・ゴールドの墓に恋人と花を供えに来てます。ゾンビになってたことは忘れたみたい。ついでにキャサリンと寝てたことも。



ランドールに幻視の能力があったりするところは、『ブラッド・リンク』と同じような傾向の話ではあるけれど、画面は大違い。あっちは照明にこだわってあっていちいち美しかった。こっちは主に蛍光灯のフラットな光。そういう無機質なむきだしの空間に、おどろおどろしい幽霊が住んでいるという倒錯した雰囲気を出したかったのは理解できますが・・・ じゃあなぜバルセロナなんだ。

冒頭は高層ビルの上からバルセロナの街を俯瞰するシーンで始まり、サグラダ・ファミリア教会も遠景に映っています。そのほかにも凱旋門やら、町の教会や裏町のアパート群が何度か意味ありげに映っている。でもけっきょく脈絡はないんだけど。なんか建築物にこだわりがあるのは分かるし、せっかくそういう街で撮ったんだから、味気ないオフィスビルだけじゃなくガウディの建物などもストーリーに生かしてくれればよかったのになぁ、と残念であります。

モリアーティのルックスは、うーん。髪を横になでつけてて、オデコの縦だけじゃなく横幅も強調されているせいで、たしかにあの世からの信号も額で受信しそうに見える(と、モリアーティソンのRossなら絶対に言うと思う。というか『ブラッド・リンク』のレビューで同じこと書いてたかも)。なんでわざわざあんな髪型にするんだろう。それに衣装も。80年代だから仕方ないんでしょうか、これも。

ともかく、通常のホラー映画とは別な意味でショッキングな場面ばかりで、エレベーターの階数ボタンとか、ゴールドと喋る空調装置がどれほど邪悪な外見かとか、Rossみたいにスクリーンショットでお見せしたい。でもなにしろ二度と再生できない幻の作品なので、諦めるしかないです・・・って、誰も残念がらないと思うけど。

実はこの作品、なぜか日本語字幕つきのDVDが存在していたらしい。Amazon.com では「品切れ中」だけれど、探せばどこかにあるかもしれないです。私は・・・たぶん買いません(笑)
 
 

*1:『悪魔の赤ちゃん3』の射的場で娼婦に会うシーンや、『新・死霊伝説』で息子を夜の学校に放り出してバンパイア娘についていくシーンなど。目を見開いたり、ニヤケたりは一切せず、全身のたたずまいだけで欲望を表現してる