"Full Fathom Five"

 
またマイナーな映画を買ってしまいました。"Full Fathom Five" 1990年、米国版VHS。これを手に入れた理由はひとつだけ、レビューを読んでモリアーティがピアノを弾くシーンがあると知ったためです。パナマの軍事勢力がロシアの潜水艦をハイジャックしてヒューストンをミサイル攻撃しようとする・・・という話で、彼の役は米国海軍の大佐、潜水艦の艦長です。パナマ侵攻直前の緊迫した状況だというのに、この大佐、救出した反政府活動家のラティーナ美女を一生懸命口説く。そして基地の将校クラブで彼女の気を引こうとしてサンバの曲を弾いて歌ってみせるのです。

なんだか唐突な展開だなー。この二人のロマンスはいちおう話の縦糸の一本になってはいるんだけど、ここで大佐が歌う必然性はまったくなし(笑) 俳優が「ここで歌わせろ」と要求して監督がしぶしぶ受け入れたみたいな感じです。

また、小型潜水艇で探索中に事故で海底に閉じ込められ、酸素不足で絶体絶命なシーンでは、意識朦朧となりながら何かぶつぶつと歌っています。これも自作の曲かもしれない。

考えてみればそういう「歌うシーン」は彼のいろんな映画にはさまっていて、もしや仕事をするたびに監督に「歌わせてくれないか」と頼んでいたんじゃないかという気がします。

映画デビュー作、"My Old Man's Place" では、酔っぱらってアルバム Reaching Out 中の一曲らしきものを歌ってます。そもそも、この映画のために曲を書いたけれど使ってもらえなかったという話がある。

バング・ザ・ドラム』ではシンギング・マンモスの一員としてコーラスに。

ラリー・コーエン監督にはいろいろ使ってもらってます。一番ちゃんと演奏しているのは、これまでさんざん話題にした『空の大怪獣Q』。

『悪魔の赤ちゃん3』では船の上で歌うシーン。同乗の女性科学者の気を引こうとして思い切り嫌がられるという設定。

2006年の"Pick Me Up"では初老のトラック運転手で実は殺人鬼という役(!)なんだけど、やっぱりドライブインの壊れたピアノで演奏を始め(熊がどうしたとか、たぶん自作の歌)、ヒッチハイカーの女の子をひっかける。その娘は結局トラックの積み荷となってしまうんですが。

そして極めつけは Law & Order でディック・ウルフに「ストーンに歌わせたい」といって却下されたこと。それで「歌うベン・ストーン」シリーズを書いてみたりしたのですが、やっぱり実エピソード内では無理だったろうと私も思います。でも、ストーン時代にシーズン6フィナーレ「余波」のようなエピソードがあれば、マッコイのようにバーで語るかわりにピアノの前で歌ったかもしれません。それにクレア・キンケイドが惚れて・・・というような話には絶対ならないと思うけど(笑)


などと、この映画と関係のない話ばかりで、作品の感想はないのかい!って感じですが、すみません、語ることはあまりなく・・・潜水艦ハイジャックというアイデアは面白いと思うんですが、まあ演出とか特撮とか衣装とか、残念な点が多い作品でした。『レッド・オクトーバーを追え!』が同じ年の公開で、つい比較してしまうのも敗因・・・。