The Creation of Law & Order

 
シーズン1のDVDに入っているボーナストラックです。前記事にコメントをいただいてから見直して、なかなか面白いところがあったのを思い出しました。ディック・ウルフとジョー・スターン(シーズン1から3までのエグゼクティブ・プロデューサー)がそれぞれ喋っていて、ところどころにシーズン1のエピソードから引用した場面が挿入されています。その中でシーズン1の主要キャストについて両プロデューサーが語るところがあります。

[ジョー・スターン] 私は演技スタイルの担当で(中略)この番組のために最小限の表現方法を作り上げた。まず、主要人物のバックグラウンドや私生活は描かれない。だから、キャラクターの来歴を語らずして表現できる俳優を探すのが重要だった。

[ディック・ウルフ] 最初の4年間は、マイケル・モリアーティが番組の魂だったと思う。彼は素晴らしい役者だ。マイケルこそがドラマに説得力を持たせた功労者だ。彼の才能ははかり知れないものがある。彼には自分なりの道徳心があって、何が善で何が悪かについて、深いところで・・・妙な言い方だが、心の平安というべきものを持っていた。マイケルがあの世代で最高の俳優の一人なのは間違いない。

画面がL&Oの場面に切り替わって、
[ストーン] (あきれたように首を振り) 上等だ。 君ら二人によれば、容疑者は誰もいないということか。

またスタジオに切り替わって、
[ディック・ウルフ] 1950年代前半は、スターと言えばスティーブン・ヒルマーロン・ブランドだった。

ふたたびL&Oの場面。
[シフ] 奴は事情を知っている。 [ストーン] そうは思えない。 [シフ] あいつは後ろめたそうに見える。

[ディック・ウルフ] スティーブンは役者の中の役者だ。


わははははは。今更のようにモリアーティを絶賛するウルフに対してストーンが "Great." 「上等だ」と吐き捨てるところでは大笑いしてしまいました。この場面は1-19「闇に光る牙」からカットしてきたもののようです。作り手は、ウルフとモリアーティの確執を思わせるブラック・ジョークを狙っていた!としか思えないのですが裏読みしすぎでしょうか・・・

ティーブン・ヒルのところでも、ストーンはまだウルフに怒っているけどシフはまんざらでもなさそう、なんて解釈になってしまいます。「後ろめたそうに〜」というところは、ウルフを弁護しているようにもとれる(笑) 実際には1-22「汚れた手」で、クレイゲンが怪しいと話しているところなんだけど。


こんなお笑いポイント以外にも、モリアーティは善悪の基準について"inner peace" を持ち合わせていたとウルフが言っているのが不思議であり印象的でした。字義通りだと「心の平安」、意訳すれば「迷いがない」というところか。「平安」というのは降板騒動とまったく相容れない感じがするけれど、「迷いがない」なら、ああ確かに彼はそういう人だよな、ウルフは詩的に表現したものだな、と納得できます。93年当時、訳のわからない意地を張り続けるモリアーティ相手に苦労したウルフならではの表現だったのかもしれません。