My Old Man's Place


1971年作品。監督エドウィンシェリン。米国版VHS。"Glory Boy"というタイトルになってることもあるみたい。オープニングでは、共演者の名前のあとに「イントロデューシング・マイケル・モリアーティ」と出ます。彼の映画初出演作品なのです。

監督のエドシェリンは、Law & Order にシーズン2から参加し、シーズン5から10までエグゼクティブ・プロデューサーを務めた人です。(モリアーティ自身も「古くからの友人」と言っているが、L&O降板時のごたごたでは見解の相違があったらしい。)

主人公はベトナムから帰還したばかりのトゥルービー・ペル(マイケル・モリアーティ)。戦友のジミー・ピルグリム(ウィリアム・ディベイン)とサンフランシスコの街をぶらついているうち、たまたま同じ飛行機で帰還した”軍曹”(ミッチェル・ライアン)と知り合う。

トゥルービーはナパ・バレーにある自分の父親のワイン農場へ顔を出すつもりをしている。三人は一緒に行こうと、真っ赤なコンバーティブルを中古で手に入れ出発する。だが着いてみると、農場は手入れされず、かつて立派だった家も崩壊しかかっている。それでも、特に行くあてもない三人はそこに滞在することになります。

”軍曹”はもともとあったサディスティックな傾向が戦場で強化されてしまったような人物。市民生活に再適応できていない。ジミーは未熟・衝動的、考えなく馬鹿なことばかり口走る男で、ことあるごとにいろんな相手に殴られる。若いトゥルービーは、ベトコンの女兵士を射ち殺した記憶に苦しめられている。そしてトゥルービーの父親ウォルター・ペル(アーサー・ケネディ)は、旧世代の道徳に縛られ、世間の変化についていけない。そのためにうらぶれた農場に閉じこもっているようにも見えます。自身は第二次大戦の元兵士で、息子が自分の軍隊経験を誇りにしていないのを理解できず苦々しく思っている。

人里離れた、さびれた農場で、この四人の群像劇が展開します。トゥルービーは”軍曹”ともジミーとも違った面でそれなりに通じ合うも、父親には激しく反発する。父親は三人の酒・マリファナ・ポルノ漬けの生活態度に怒りながら、唯一”軍曹”とは軍の秩序への依存という点で共通するものがある。ダメ男のジミーは”軍曹”から徹底的に見下されさげすまれる。

かれら全員は、戦争の影響や後遺症(程度の差はあるにせよ)をひきずっているという一点のみで共通しており、あとは解りあうことのない不毛な関係なのです。「崩壊しかかっている家」はアメリカ社会そのものの隠喩のように思えます。

ただでさえ緊張をはらんだこの四人の生活に、若い女がひとり登場することで、状況は火薬庫にマッチを投げ込んだのと同じことになります。小爆発につづいて一時的な和解があり、小康状態に気を許したトゥルービーが町へ買い物へ出かけた隙に、ほんものの悲劇が・・・

図式的な人間関係やテンポよく展開するドラマはLaw & Orderにも通じるところあり。ただし人間ドラマとしては面白いものの、女性の描き方なんかが古臭いという不満はあります。やはり制作年代のせいでしょうか。ベトナム戦争が残した傷を描いた映画としてはかなり早い時期、走りといえるもののようです。『ディア・ハンター』や『地獄の黙示録』ですら1970年代後半ですからね。


しかしそんな表向きな感想とは別に、この映画にはまたも驚きの映像が。”軍曹”とトゥルービーが娼婦に会いにでかけ、断られてしまった後の場面。真夜中、人けのない街路(それも兵役登録の看板前)で”軍曹”がおもむろに服を脱ぎだし「競走だ。ケツ出しで」と言います。次のショットがその言葉通り、ほっぺた四つ(二人分ね)のアップ。二人が全裸で夜の町を駆け抜ける場面がそれに続きます。

いやー、ははははは。「あのベン・ストーン検事役の俳優さんは、映画デビュー作でお尻を出してました」なんて話を書くことになろうとは思いもよりませんでした・・・しかもL&Oのプロデューサーがそれを撮った人だったとは。

でも、お尻の話で一年終わるのも何なので、この作品の画像をちょっとだけ。本当はこういうことはやっちゃいけないのですぐに消しちゃいますが、今回だけね。

そのほかの話題としては、テーマ曲の"Glory Boy"はいかにもな70年代フォーク・ロックで哀愁があっていい感じです。また、モリアーティはこの作品のために曲を書いたけれど、使ってはもらえなかったのだとか。ちょっと残念。