Law & Order 1-5 Happily Ever After 「冤罪」

 
では、ぶっとおし放送の余韻さめやらぬうちに、シーズン1でレビューし残してたエピソードのひとつを。

警察パートと検察パートが無理なくつながっててよくできた話だと思います。裕福な夫婦の財務コンサルタントが実は妻の愛人で、共謀して夫を殺したものの、捜査の手が及んだとたん妻の方は彼に罪を着せようとする、という話。原題はおとぎ話の(そして王子様とお姫様は結婚して)末永く幸せに暮らしました、という文句です。もくろみでは保険金を手に入れ、二人で幸せに暮らすはずだったのに、ストーンによって「囚人のジレンマ」そのものの状況に突き落とされ破滅する。

ところでこのエピソードでのストーン、ときどき歯が痛そうな顔をしてます。左の下。二つ前のエピソードでゲイに殴られたあたりだけど、演技じゃなく本当に歯が悪かったんじゃないか。他のエピソードでもよく見ると同じ表情をしてることがあります。

また前半を飛ばしまして、妻の方が「撃ったのは愛人」と言いだす場面から。「彼は気が狂ったようだった、別れたいと言ったら人が変わったようになって私を殺そうとしたんです」 みごとな女優ぶりですねぇ。

シフとストーンの会話。シフ「できれば両方とも有罪にしたい」ストーン「血に飢えてますか」 「カレンダーを見てみろ」 「ああ、来年は選挙か」 これで今回のストーンのゴールが設定されたらしい。

巨額の生命保険加入が判明。妻と愛人の二人ともむちゃくちゃ怪しいのに、なかなか決め手がありません。次にグリービーとローガンがやってきて、夫名義の銃の購入記録が見つかったことを話す場面。

ビネットが「二人とも証言を変えなければ、男の罪状は悪くて第2級故殺。彼女はおとがめなし」と言ってる後で、ストーンが「歯いてー」という顔をしている。「彼女は男が心神耗弱だと主張するつもりだ。この前、気が狂ったようだと言ったのはその準備だ」という台詞も、舌で歯を押さえたまま喋ってるように聞こえます。

男をオフィスに呼ぶ。凶器の銃について、女に不利な証言をする条件で第1級故殺を提示。被告は応じない。ロビネット「まだ彼女を愛してるらしい」 ストーン「第2級故殺で寝返る程度だ」 

刑事たち、まだがんばります。目撃者から証言を取り直し、時系列から妻が撃ったと思われることがわかる。妻を逮捕、起訴。被告人が二人になった裁判は一進一退。

オフィスに妻を呼ぶ。「話を聞こう(歯いてー)」 妻「私は怖かったんです」 弁護士「男に不利な証言をするから、幇助と共同謀議でどうだ」 「冗談だろ、そんな軽罪で?」 またもや取引不成立。このときのストーンの「信じがたい」って顔好きだなぁ。

取引がなかなか進まないので苛立つシフ。敗訴だけは避けたいので、第2級故殺でいいからなんとしてもまとめろという。

別の日。オフィスに男を呼ぶ。 ストーン「彼女はあなたに罪を着せる気だ」 男が凶器の場所を教えると言いだす。ここの緊迫した顔もよかった。「第1級故殺で」やはり取引不成立。「愛だと。お互い相手を売ろうとしているくせに(ちくしょう歯がいてーよ)」

そのまま、別室に妻を呼ぶ。「彼は凶器を出すと言っている」弁護士と顔を見合わせる妻。ここから、「競売です」のシーンです。"Going, going..." というところから "Gone."「不成立」までの声がこれぞストーン!という静かな迫力でしたね。

夫人     You don't scare me, Mr. Stone. 怖がらせようとしても無駄よ。
ストーン    Oh, yes, I do, Mrs. Ralston. I scare you a lot. And I should.  本当は怖いのでしょう、ラルストン夫人。怖いはずだ。

オフィスで待たせてあった男の方に戻って(忙しい忙しい)、「第1級故殺だ。それに凶器の提出、陪審の前で証言」被告、無言。「早い者勝ち」と宣言。

全員を会議室に。それぞれの思惑が交錯するクライマックスです。衣装と色調をグリーンで統一してある(というか、会議室での場面っていつも緑色がかってる気がする)。「最後のチャンスだ」 妻「はったりだわ」 しかし緊張に耐えきれなくなった男の方が手を挙げる「第1級故殺で」 「成立」

「なんて馬鹿なの」と妻が叫びますが、その通り。だってシフは第2級故殺でいいとずっと言ってたんです。ストーンはそれに上乗せしようとしてこんなに頑張ってたわけですが、この二人組に対する嫌悪のためだったのか、それともシフへの忠誠心から選挙の後押しをしようとしていたのか、どっちでしょうね。

タグの場面。ストーンが "She wants what she wants when she wants it." と言って電灯を消すときに一瞬半笑いの表情が。ちょっとマニアックな感想をいうと、この顔、モリアーティの他の作品を思わせて好きなんです。『ザ・スタッフ』のモー・ラザフォードなんか全編これですから。 

脅しあり、苛立ちあり、最後の緊張が解けた表情まで、ストーンのいろんな顔を楽しめるエピソードでした。全般に、こういう個人的な犯罪のエピソードの方がストーンの良さが出る気がします。政治的な話になるとどうもロビネットに任せておいてほしい感じがする。これはモリアーティと政治、という組合せを自分が警戒してしまうせいかもしれません(笑)