Law & Order 6-14 Custody 「子を盗む」

 
Law & Order スパドラ放送の方はシーズン6がずいぶん進んでいて、もうエピソード14「子を盗む」が放送されたのに気がつき、あわてて再放送を録画しました。ヤメ検弁護士になったポール・ロビネットがベン・ストーンを召喚しようとすると聞いていたので見たんですが、ストーンは名前が数回出てくるだけ。それよりもロビネットがフィーチャーされているのがいい。法廷での弁論あり、裏での駆け引き戦術あり、最後には自分の転向についての告白あり。あいかわらず冷静でまっすぐながら、世知を身につけて無敵の弁護士に成長しているところが嬉しかったです。

刑事パートは最初のうち、殺人と誘拐のストーリーがよくわかってなかった。「架空の養子」っていう話にとらわれて、あの白人夫婦の養子も架空で、誘拐も狂言なんだとずっと信じていた(笑)

子供はどうやら本物で、母親とともにポート・オーソリティを出発するばかりのバスの中で保護。その弁護士としてロビネットが登場する。棄却を申し立てて有能ぶりをアピール、と思ったらいきなり飛び道具を出します。棄却要求を却下した判事を、過去の差別発言(麻薬中毒者には不妊処置を施すべき)をもとに忌避すると言い出す。必要ならストーンを召喚すると。

判事     I don't remember saying anything of that kind.  そんなことを言った覚えはない。
ビネット  I do. And if I subpoena him so would Ben Stone. We nearly fell off our chairs when you said it.
       私は覚えてます。ベン・ストーンを召喚したら同じ証言をするでしょう。二人とも椅子から落ちるくらい驚いたんですから。

マッコイが「判事をいびりだしたな」と嫌味を言ってもまったく動じないポール。「ジャック、検察の方が人もカネも力もあってずっと高圧的だよ」と余裕の笑みを見せて後ろを向く。 このセリフがそこらの弁護士から出たら「ふぅん」って感じですが、ポールだとその通り!って思っちゃいます(笑)

シフはこれがロビネットの作戦だと見ぬいてました。
シフ     Ben Stone is traveling in Europe and is not available to testify in any hearing.   ベン・ストーンはヨーロッパ旅行中で、証言などしようがない。
マッコイ   Paul knew.       ポールは知ってたのか。
シフ     Yeah. Pure poker.    そうだ。やられたな。

冒頭陳述で、人種差別をめぐる彼の立場が検事補時代と180度変わっていることが明らかになります。システムに人種差別が組み込まれている限り、黒人に勝ち目はないと主張。Cultural genocide(文化の虐殺)というフレーズにはさすがにぎょっとしました。

無罪を勝ち取るためにはストレートでない手も使う。養母が過去に鎮痛剤を飲んだ状態で娘を乗せて運転して逮捕されたことを暴露。このときのマッコイの驚きっぷりがよかった(飛び上がるように立ち上がって"Objection!")。検察側は押されっぱなしです。

マッコイは「誘拐」に絞って話をすればよかったのに、実母に経済能力がないことを責めるような質問になってしまったのは、意図したことなのかどうなのか・・・陪審は評決不能を宣言、審理無効に。

マッコイとロビネット、雪の街角で取引の話をします。「ここまでやりたくなかった」(字幕は「泥沼」と表現・・・上手い!)というマッコイは、ポールに含むところはないが、彼の変貌ぶりを不思議には思っているようです。

マッコイ   You are a long way from the district attorney's office.   検事補時代とは、ずいぶん変わったようだな。

ビネット  Ben Stone would say that I'd have to decide if I was a lawyer who's black, or a black man who's a lawyer. All those years I thought I was the former. All those years I was wrong.
       ベン・ストーンには、私は法律家で黒人なのか、黒人の法律家なのか自分で決めろと言われていた。当時はずっと前者だと思っていた。今思えば間違っていた。

最後のフレーズは、1-11 Out of the Half-Light 『終わらない憎しみ』でストーンがロビネットに問いかけた言葉でした。このときのポールの答は「状況によります」。これをみると、前者である(=黒人である前に法律家である)と盲目的に信じ込んでたわけじゃないみたいですね。もちろんストーンに強制されたわけでもない。当時も迷いはあったが、やはり法律家を前に置いていた、ということ。

今回の台詞は、自分の今の状況をマッコイと視聴者に分かりやすく説明してくれたということでしょうか。もうOreoと呼ばれることもないし、迷うこともない。だからこそ法廷での弁論に説得力があったわけですね。


[追記] 
1-11の記事で、この会話の部分を引用していなかったので入れておきます。

You think I sold out?
Does it matter what I think? If it does, I'll tell you. But it's something you've got to decide for yourself.
You've got to save this stuff for the morning speech?
Maybe. Do you think of yourself as a black lawyer, or a lawyer who's black?
Depends on the context.


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今回、まったく自分に呆れてしまったのは、政治的なエピソードになると自分の意見というものが全然なく、そのときどきの主役に同調してしまうこと。1-11では人種差別論議にまどわされず公正な態度を貫こうとするポールに共感してたのに、今回は社会システムの不公平を糾弾する彼を「そうだそうだ!」と応援してしまう。ロビネット好きということでは終始一貫してるんですが・・・(笑)

トリビア。ポールが脅して交代した後の判事はリサ・ポングラシック判事。この人は訴追側に厳しいというか、ストーンに言わせると「予測不能」な人。4-4 Profile 「プロファイリングの死角」で連続殺人犯を保釈し、それに抗議したストーンは法廷侮辱罪で逮捕されるところだったが、キンケイドの機転で救われた。実は、キンケイドが「新しい判事はポングラシック」と言ったときにもうひと波乱あるのかと期待したけれど、それはなかった(笑)