ベン・ストーン検事のネクタイ騒動

 
前記事のコメント欄にてリコさんに触発された想像が頭を離れなくなってしまったので(笑)ここで使わせていただきます。リコさん、快諾いただきありがとうございました。Law & Order 2-13『知略の攻防』から設定とキャラクターを借りてきましたが、ストーリーはすべて私の妄想です。

このエピソードで、ストーンはロビネットとテニスをやって腕を怪我しました。片腕でもたいていのことは何とかなりますが、ネクタイだけはどうにもなりません。翌朝、ストーンのオフィスへやってきたロビネットが手伝ってやろうとします。

ところが、ひとのネクタイを結ぶのは意外と難しいものなんです。正面からやろうとすると前後が逆なので結び方がわからない。かといって背後から手を回そうとすると、ストーンが痛がって暴れます。

「ちょっと、ベン!じっとしてて下さいよ!」
「いっ痛いんだよ、ポール!腕に触らないでくれ!」

オフィスの外から見ると、ロビネットがストーンの首を絞めているようにも、背の高い二人が格闘しているようにも見え、「何だなんだ」とだんだん人だかりができてきます。

外の人垣に助けを求めにいったロビネット。ストーンはほとんどのスタッフから恐れられているせいで誰も近寄ろうとしないけれど、そのうちの一人、若い女性職員を「昼飯をおごるから」と説得して連れてきます。ついでにギャラリーもぞろぞろと入ってくる。

「立ったままじゃ無理ですよ。座って下さい、ミスタ・ストーン」
「オーケイ。君は・・・」
「ケイティです。去年うちの父がやっぱり手を怪我して、1か月ほど毎朝やってました」
「優しいんだね。ありがとう、ケイティ」

ところが、椅子に座ったストーンの上にかがみこんで、その真っ青な目で見上げられ、間近で「ありがとう」とにっこりされた彼女、しどろもどろになってしまいます。ご、ごめんなさい!手が震えて・・・うまくできない。と言って逃げるように出ていってしまう。あの検事・・・怖い人だと思ってたのに、あんなに可愛い顔で微笑むなんて、反則だわ!

9階のオフィスでは、まだストーンがロビネットに文句を言ってます。自分のロブで上司に怪我させた手前、ロビネットもなんとか解決しようと必死です。

"We're running out of time! I need to be in court at nine this morning, for God's sake!"
「時間がないんだ!今日は9時に出廷しなきゃならないんだぞ!」

"Ben, the judge will allow you to appear without a tie when you are injured."
「ベン、怪我してる時くらい、ネクタイなしでも判事は許してくれますよ」

"No way, Paul! Benjamin Stone will never stand in front of the camera, er, in front of the jury, without a tie!"
「駄目だ、ポール!ベンジャミン・ストーンがノーネクタイでカメラの前に、いや、法廷に立つなんてことはありえないんだよ!」

ギャラリーの誰かが「11階に電話しろ」と言いだします。アダム・シフの秘書はおばちゃんばっかりだから、こういうのも対処できるだろうと。

ところがなぜかやってきたのはシフ本人。面白がって見に来たらしい。じっと眺めていて、おもむろに指示を出します。

"Take off your shirt, Ben."
「シャツを脱げ、ベン」

".....Adam?"
「・・・・・アダム?」

"Take off your shirt, put the necktie on it, then put it on."
「シャツを脱いで、ネクタイを通してから着ればよかろう」

"Oh, please, Adam! Not in the public like this. Besides, the shirt sleeve kills me."
「嫌ですよ、アダム!人前でそんな。それに袖を通すだけで大変なんですから!」

"All right. Call Mrs. Browne."
「わかった。ミセズ・ブラウンを呼べ」

ベテラン秘書のミセズ・ブラウンがやってきます。ネクタイ結べるかどうか訊かれ、
「離婚した飲んだくれの亭主はね。毎朝、私がネクタイから靴下まで着せないと出勤しようとしなかったの」

ちゃっちゃっとネクタイを結び、ぽんと叩いて一丁上がり・・・なんですが、その叩いたのが左腕だったもので「うぎゃぁっ!」

苦しむストーンに構わずその場を締めるシフ。
「良かったな、ベン。明日から、毎朝7時に彼女のオフィスへ出頭だ。それ以外の時間を使うことは許さん」

(その後、優しいケイティはクリスマスにストーンからカードを貰いました。でもそれが娘に送るような子供っぽいものだったのでがっかりしたそうです・・・あいかわらず、そういう方面には疎いストーンなのでした。)