Law & Order 1-6 Everybody's Favorite Bagman 「消された運び屋」

スパドラ放送はもうじきシーズン5ですね。マッコイも見たいですが、ストーン時代のエピソードで見逃してたりちゃんと見てなかったりするものもたくさんあるので、ぼちぼちとDVDからレビューしていこうと思ってます。ストーリーそのものよりは、演出・演技とか背景、そしてやっぱりストーンが中心になるかと。今回は"Everybody's Favorite Bagman."

これはエピソード6となってるけど実際には88年作成のパイロット版で、L&Oフランチャイズの中で一番古い、いわば原型であります。(エピソード番号はDVDを基にしているので、日本での放送順とは違ってるかもしれません。IMDbによれば本国ではE6として放送されたようです。)

画面はタイトルバックのイメージ通り、青と赤の光で始まります。パトカーから見た街灯と車のテールライト。画質が悪いのは、ウルフの言によるとドキュメンタリー風ないしフィルム・ノワール風にしたくてわざと35ミリじゃなく16ミリで撮影したそうです。テレビ局からずいぶん反対されたらしく、後のエピソードでは綺麗になっていきますが。

グリービーは、このエピソードでだけ葉巻を手放さないタフな刑事のイメージです。メインシリーズではもう少しアクを弱めて親しみやすくしてありました。私はのちの可愛めグリービーの方が好きです。トレンチコートに葉巻スパスパだと、あまりにもオールドスクールコロンボか!)な気がするので・・・

刑事パートの後、ストーンの鬼検事ぶりについてさんざん前振りがあって、いよいよロビネットがストーンのオフィスのドアを開けます。壁にはボビー・ケネディのポスター。デスクの前に座ってるのは・・・ あれ?鬼検事という印象とは、なんだかちょっと違います。しかもロビネットを見てさわやかに微笑している?!

このエピソードでは全体に、スマイリーなストーンが見られます。新聞記者に会ってるとき。通りを歩きながらロビネットと話しているとき。ストーンの笑った場面は貴重だと思ってたましたが、ここにたくさんありました。

ただし、にこやかながらロビネットにはきついこと言ってます。敵方につくなら辞めろとか。やっぱり鬼だ、と納得。
Now I'm not going to do this, Paul. You're either on my team or Jefferson's.
(車の中で、アフリカ系のヒーローである警察副本部長のダークサイドについて語る場面。字幕は「辞めろ」とまでは言ってないという解釈。それもありえるが、ロビネットの反応からすると結構厳しい感じだと思う)

喋り方は、語尾をちょっと放り出すような感じ。シニカルな半笑いの表情とあいまって、70-80年代の映画によくあるようなタフガイのイメージが少し混じってるのです。最後に軽くアクションもありますから、それが似合ってもいます。(クライマックスで撃ち合いをやってるレストランに丸腰で飛び込む検事たち、無謀すぎ〜!止めろよFBI捜査官〜!)

しかし、その後のストーンはもっと抑えた話し方をするし、笑いません。このパイロット版収録の後、シリーズが始まるまでに2年間開いてますが、その間に役を一度作り直しているということですね。比較のためS1E1『死の処方』(90年)を見てみましたが、そこではもう完全にストーン口調になっていてまったく違和感がありませんでした。

当たり前といえば当たり前なのですが、90年に役を作ったらその後4年間それを通しているのにあらためて気がつきました。L&Oをずっと見ているとストーン=モリアーティの地のように思えてくるけれど、ベン・ストーンはあくまで役であり作品の一つなのです。

結論:全体の演出として、パイロット版にあってその後のエピソードから除外されたのは、当時でも「古臭い」と感じられる要素やステレオタイプだといえます。ストーンのタフガイ、グリービーのコロンボ、ポスターとか(後のエピソードでは、ボビーは入口のドア脇の写真に変わってる)、登場人物が公共の場所でタバコ吸いまくりなところも。オフィスもこぎれいな内装になりました。

パイロット版の荒っぽいところも魅力ではありますが、やはり後の洗練された演出の方が受け入れられやすいだろうし、何よりもステレオタイプを排除したことによって、ベン・ストーンという特異なキャラクターを生み出したことが、番組の成功の大きな理由だったと思われます。

おまけ:ほかにも後のエピソードでのストーンと微妙に違ってるところがあります。まずデスクの前で背筋をまっすぐ伸ばして座っている。いつもはデスクランプのすぐ上に顔がくるぐらい、思い切り屈んでましたよね。これもなんらかの効果を狙って作ってると思います。タフガイをやめた分、静かな迫力をかもしだすとか。あと、髪の分け目が反対。ま、分け目が重要な髪型じゃないけど(ぷぷ)

ああ・・・マイポットからコーヒー注いで飲んでるのは変わってないですね。昔っぽい「魔法瓶」。なぜこれを残したのかは謎!