Law & Order 3-15 Mother Love  「母の愛」

私にとってはストーンのネクタイ緩めだけでひと記事書けるエピソードなのですが、もちろん眼目はそんなことじゃなく、母親役の女優さん、メアリ・アリスの見事な演技でしょう。やはりTVが中心の人で、サム・ウォーターストンの"I'll Fly Away"にも何度か出演しているようです。

もう一つの注目はロビネットの冷静さとまっすぐさ。今回は彼の見せ場をストーンが後から攫って行かないのも素晴らしい。欲をいえば、人種問題以外でもロビネットにこういう活躍をさせてほしかったです。

刑事パートは、ブリスコー&ローガンの息がぴったりです。クラックハウスに踏み込んでジャンキーを脅すシーン、好きだなぁ。分署に戻って、見つけた売人の銃が現場とつながり、ローファイブを決める二人。そこに完璧なタイミングで水を差すクレイゲン。待ってました!って感じ。手詰まりのうちに、現場のアパートから銃が出てくる。容疑者の指紋ばっちり。

売人は起訴されるが取引を拒否。おかしい。シフは証拠の再吟味を指示。ロビネット、被害者の所持品から貸金庫の鍵をみつける。祖母と一緒に銀行へ来ていたらしい。祖母はロビネットの追及をかわすためお世辞を使うが、彼はかすかに嫌そうな顔をしている。結局、孫娘に銃で脅されて無記名社債を渡したことを聞き出す。オフィスへ戻ってストーンと話し、両親への疑念が確信に。

この場面が運命の分かれ道でした。2か月前、ここでよそ見をしていたら、私はストーンに心臓をつかまれることもなく、魔物をしょいこむこともなかったでしょう。ストーンはロビネットと話しながらオフィスに入ってきて座る。左手でネクタイをぐいと引っ張って緩め、シャツの襟に指をかけたところでちらりと上を見、ボタンを外して襟元をくつろげる。この動作、たったの3秒。セリフは "I guess you're about to tell me how that gun got into a sewer pipe." 全然ロマンチックじゃない。トイレの汚水パイプがつまった話をしてる男に惚れちゃった(笑)

それはともかく、このシーンのストーンの「真相が突然見えてくる」という演技は見どころでもあります。

シフとも相談して、ロビネット、今度は母親に会いに行く。ビンゴ。自分でも信じられない様子。

ファミリーが弁護士とともに検事局を訪れる。ここで母親の告白が4分近く続きます。初期シーズン、いやシリーズ全体の名場面に入ると思います。母親のクロースアップは全部で7カットですが、1カットがだんだん長くなり、最後は1分半という長回しで、涙が頬をこぼれ落ちる様子をとらえます。娘は私に銃を渡して言った。ママ、あたしをこの地獄から救って、お願い。あのとき私は諦めた。あの子の望んだ通り、可愛い娘を手にかけた。

この話を聞き終わったストーン、確かに目がうるんでました。まさに、鬼の目にも涙。

しかし、今度はロビネットが冷静&正論です。母親に同情的な世論に迎合しようとするシフとストーンに向かって、「差別主義者のレッテルを恐れて起訴しないんですか?」 (ストーン)「私は、相手の肌の色には影響されないと思いたい」 「それは無理です」

この、「それは無理です」という短い返し、ポールにしか言えない言葉ですよね。そして次の長セリフ。

Look, it's tragic. I can't deny the woman's pain. I can't pretend the drug epidemic hits everyone the same. Nothing hits black and white the same. But does that mean the law should treat them differently? Do I want to see the woman go to prison? No. But I don't see how we can walk away from it.

ストーンは執行猶予刑を提案。ロビネット受け入れない。シフ、ふっと笑う。ストーンの弟子が師匠以上に頑固なのを皮肉に思ったのでしょうか。「受話器は外しておく。大陪審へ」

陪審。評決を待つあいだのストーンの言葉。

The blindfolded lady has two scales, and we should never look like we have a finger on one of them.
目隠しをした女神(正義の女神のこと)の持つ天秤の片方に、我々が手を添えているように見えるのは避けなければ。

・・・ちょっと疑問。これ、殺人犯の涙にほだされた検事の言うこと?まさか、ロビネットのセリフを取ってないよね?

陪審はわずか14分で結審。起訴を確信するロビネット。その厳しさにあきらめ顔のストーン。ところが評決を見て信じがたいという表情。第一級故殺での起訴を助言したはずだが、あなた方は銃不法所持および非行で起訴とした。陪審長、これが多数意見で間違いないか。ポールの感情はまばたきに現れるだけ。

父親、階段でロビネットをつかまえる。あんたはスカーズデイル(NY郊外の高級住宅街)の出身だろう。ポールは落ち着いてハーレムと答えます。またもや法制度の平等性についての議論。法を曲げるわけにはいきません。あんたは法制度が変わると思うのか。いくら待っても真の平等なんて訪れやしない。父親は捨て台詞を吐いて身をひるがえし、階段を降りていく。嘆息するポールの横顔で終了。

かっこいいなぁ、ポール。これであと数エピソードしかないなんて残念です。といっても、ブルックス(ロビネット)もフロレク(クレイゲン)も、シーズン4の契約があってもちろん出演する気でいたのに、解雇を知らされたのはシーズン4の撮影が始まる1週間前だったのだとか。無情の回転ドアです・・・。