The Has Been


では・・・そろそろストーンともお別れだし、この時点で自分の気持ちをまとめておこうと思います。これまで降板騒動について長々とゴシップを書き連ねたのも、実はこれを書きたいがための背景説明なのでした。

マイケル・モリアーティによる書きかけの脚本だというThe Has Beenがネット上にあります。きちんとクレジットされていないものの、読んだ限りでは本物と思えました。掲載サイトの日付が1996-2006だから、その間の作品と思われます。映画化されることはたぶんないと思うのですが、いちおう、ネタバレ注意(笑)

Has Been とは、「過去の人」の意味。落ちぶれた俳優の、あらたな成功と転落と救済の物語です。コメディだけど悲劇。スラップスティックな自虐ギャグの合間から、彼が人生をどうとらえているかが垣間見えるような気がします。

愛と怒り、後悔と矜持、死と希望が入り混じった、とっても悲しくておかしくてシリアスな話。本当に、笑いながら泣いちゃいました。

50ページばかりの中にいろんな要素があるのですが、Law & Order降板騒動にかかわっていそうなところを抜き出してみましょう。

登場人物の一人に、L&Oプロデューサーのディック・ウルフを思わせる人物(リチャード・コヨーテ!)がいます。主人公の落ち目俳優ローレンス・モントルーはコヨーテのことをひどく恨んでいて、口をきわめて罵ります。自分のほかにオリジナルキャストを4人も首にしたとか、再放送分の使用料を払ってくれないとか(笑)しかし別のところでは、彼のことを「敵というより、埋めがたい溝ができてしまった、かつての仕事仲間」とも語っています。

モントルーは、仲間と考えていたコヨーテから裏切られたと感じているのでしょうか。人気番組から、ポスターをはがすように「むしり取られた」(モントルーの台詞)と*1。ギャラの未払いなどというけちな非難の下に隠して、自分を捨てた父親への感情のようなものが流れている気がするのはうがちすぎでしょうか・・・

こういうとモントルーはおそろしく不幸みたいだけれど、実はそうでもない。70にして新たな恋におち、ピアノの前で歌いまくり。そしてもちろん常にワインでご機嫌。合間に新しい作品の撮影も。その強さの背後には彼の信仰と神への感謝があります。彼は息子に説いてきかせます。

人生は完璧なのだよ。それは神が書いたドラマ、人間はみな役者。われわれが口にする言葉は、神に与えられた台詞なのだ。

ストーリーの後半、モントルーはカムバックを果たしてオスカー賞候補(!)となり、その授賞式会場で、彼のマニアックなファンによって銃撃事件が引き起こされます。このことが間接的にモントルー自身の死につながる。モントルーは家族と友に囲まれたベッドで、最後の言葉を残します。

愛する者たち...人生は完璧であることを...忘れるな。疑いの中にあるときも、ただその通りにあれ。混乱のさなかにあっても、ただ、在れ... BE! JUST BE!


BE.


(ローレンス・モントルー、息を引き取る)



うわぁぁぁぁーーーーん(号泣)


これほど才能に恵まれた人が、どうしてこんなに苦しむことになったのか。
それを知りたいと思ってきました。
この物語はそう思っている人たちへのメッセージかもしれません。


これでいいんだよ。私は幸せなんだ。
その馬鹿馬鹿しさも含めて、人生を愛しているから。
あなたも、忘れられた俳優の人生を追うのなんかやめて、自分の人生を愛しなさい。


そう言われた気がしました。

ええ、でも、マイケル… あなたはモントルーと違って生きてるし、私はあなたの人生から何かを学びたいと思っている。だから追っかけはやめません。アカデミー賞候補になったら、絶対ハリウッドまで行きます。銃は持って行かないけど、サインしてもらうDVDをいっぱい持ってね!

*1:L&Oのキャッチフレーズ "ripped off the headlines" 「新聞の見出しを破り取った」のもじりです