劇団ポッターズ・フィールド

 
一週間ほど前に検索にひっかかってきたネットマガジンの記事。マンハッタンで行われているジェイン・アレクサンダー彫刻展の評です。モリアーティとは直接関係ないけれど、筆者(女性)が彼の劇団にいたことがあるそうで、最初のつかみとして当時の思い出を語っています。

その昔、私はマイケル・モリアーティの主催するファーオフ・ブロードウェイのin-your-face型シェイクスピア劇団ポッターズ・フィールド*1で、二十数名いた役者のひとりだった。観る人自身を深く巻き込む芝居をモットーとしていて、上演場所がセントラル・パークのベセスダ噴水だろうが、8番街のどこかの名も知れぬ劇場だろうが、観客の顔をまともに見すえながら台詞を言い、台本になくても客席の通路を歩き回っては直接話しかけたりしたものだった。

この劇団については1979年の雑誌記事で名前を見たことがあっただけで、どんなことをやっていたのか知るのは初めてでした。「観客の顔をまともに見ながら」は、きっとモリアーティの演出で、彼もやっていたんでしょう。観たかったなぁ。映画やドラマで、たまにカメラを覗きこんでるのを思い出します。でもビデオですら『大韓航空機撃墜事件』のように「目が合った!」とか取り乱してしまうのに、生のお芝居で面と向かって話しかけられたらどうなることやら(笑) ベン・ストーン時代ならミーハーな追っかけがたくさん押しかけたんじゃないかと思いますが、当時は彼もそれほど有名ではなくてこんなことができたのかも。

In-your-face は、演劇専門サイトにも「訳語がない」と書いてあったのでそのままにしてあります。もとは米国のスラングで、何かを誰かの意志に反して見せつけること=ざまあみろというような意味。その後1990年代半ばのロンドンで攻撃的・挑発的な内容の「観客の襟首をつかんで揺さぶりながら台詞をどなる」ような過激な演劇スタイルが生まれ、それを in-yer-face theatre と称したそうです。しかし筆者の語っている体験が1995年以降の話とは思えないので、「今にして思えばそのようなスタイルを先取りしていた」という意味で使っているのではないかと思います。

この思い出をひっぱり出したのは、私たちがニューヨーク大聖堂 (Saint John the Divine) で本番や稽古をするという恵まれた環境にあったからだ。ここは米国聖公会のもっとも美しい教会で───着工から1世紀たった今でも建設中であり、2001年の火災のあと最近ふたたび公開された、米国中で最大の聖堂である。私たちはそこで演出や台詞を研究したり、リア王ハムレットの解釈に熱中したり、ハンサムで素敵な声をしたマイケルが公演の「後口上」を述べるのに聞き入ったりした。彼はその後、テレビの警察・検察ドラマ Law & Order でレギュラーの役を演じている。

彫刻展はこの大聖堂で行われているそうで、だからこの話が出てきたのですね。ただし、劇団が使っていたのはいつも夜だったので、直径40フィートあるステンドグラスの美しさもほとんどわからなかったそうです。話はここの建築様式から青銅の扉など建物の細部へ移っていき、「それはともかく」と本題に入ります。全文はこちら。
http://www.americanthinker.com/2013/06/st_john_and_the_divine_art_of_jane_alexander.html


では、この劇団が出没したあたりを探してみましょう。ひさびさにグーグル・ストリートビューを使ってみました。

ベセスダ噴水からアーチ橋を望む。この噴水はパークの中でも人が集まるところで、いろんな映画のロケにも使われているようです。奥に見えるあのアーチの前あたりでお芝居をやってたのでしょうか。


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ヨハネ大聖堂の住所は1047 Amsterdam Avenue. 観光スポットでもあるようです。マンハッタンへ行く予定のある方は、ここを訪れてみてはいかがでしょう。正面のステンドグラスが西向きだから、午後の方が美しいかな?・・・・・教会の公式ホームページによるとジェイン・アレクサンダー展は7月29日まで。


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*1:無名墓地の意。文字通りの意味は、陶器に使う粘土を採る土地のこと。聖書において、イエスを裏切った後に自殺したユダを埋葬するのに、陶工の畑(粘土質で農業に適さない)を買い上げて墓地とした、となっていることから