Law & Order 4-2 Volunteers  「善意の人々」

 
「な、何をそんなに怒ってるの?」初回放送時にこのエピソードを見たときの感想です。もちろんストーンのこと。被害者に怒り、シフに怒り、法システムと加害者に怒ってる。だから何をしたいのかよくわからなくて、最初は話について行けなかった(笑)

この前の4-1「犯罪のお膳立て」では、ストーンはいつも以上に語気を抑えている。まるっきりピーター・ジェニングズです。このエピソードはちょっと特殊で、番組の主張が検察側と被告側の両方にあるからです。「故意に人命を危険にさらすようなプロデューサーは裁かれるべき」(検察側)しかし「犯罪はそれを行ったものが責任をとるべき、テレビのせいにするな」(被告側)の両方をきわだたせたいので、検察だけが目立つような作りにはなっていない。ドラマ的にはちゃんと勧善懲悪が用意されていて満足いくようになってますが、最後にまた「修正第一条」をディック・ウルフ似の役者に主張させている。

シーズン・オープニングがこれだったので、次のエピソードのストーンがこんな風になるとは予期していなくて、よけいに驚いたのを覚えています。感情が入っているのは面白いと思いましたが、同時に不安になりました。突然コントロールが利かなくなった、どうしたんだって。今となってみれば、マイケル・モリアーティ本人が「シーズン4ではピーター・ジェニングズをやめた」と言っているのだから納得ですが。

いまだに納得がいかないのは、これは1993年9月の放送分で、11月のリノ長官との対決よりも前なこと。モリアーティは、11月18日の会合こそがその後のすべての騒動の原因だったという風にずっと主張していますが、このエピソードはその予兆を感じさせるような気がするのです。ならば騒動の真の原因は11月より前から存在してたんじゃないのか。

それが私の思い込みからくる勘違いだとしても、どうしてシーズン4から抑えた演技をやめて感情をぶつけることになったのか、そこの説明は今まで探したかぎりどこにも書かれていないのです。ベン・ストーンのキャラクターを発展させるつもりだったとして、それが制作側の意図でもあったのかどうかも。


また話の後半からです。ストーンは出てきたときにすでに怒ってる。被害者に心肺蘇生を行った歯科医を、救急車を待たなかったといって責めます。その後、シフの部屋で三人の場面。えらい早口で怒ってる。壁にもたれたままで態度も悪し。「被害者は3年間も住人を脅かし続けたんだ!」とか「子供が道路に突き飛ばされたら、私だってやつを襲撃したくなる」とか無茶苦茶言った上、シフにたしなめられるとオリベットに面接させる、と言って出ていってしまう。

真犯人とその動機が判明する。いろんな人に怒りすぎて、誰を責めればいいのかまたワケわからなくなっているストーン。シフも内心「いい加減にしろよ」と思ってるかもしれません(笑)

I'm not saying that I am comfortable prosecuting a man that but for the grace of God could be me. (またこの成句ですね)
私だってこの男を起訴するのは心苦しい、神の恵みがなければ自分が彼の立場だったかもしれないから(=他人事ではないから)。

If the Almighty looked away for half a second, you could also be Roland Kirk.
神がよそ見をしてれば(=事情が違えば)、お前があのホームレスの立場だったかもしれないんだぞ。

裁判。被告役のデニス・オヘアはエピソード6-21や8-5を見た後だとすっかり被告席に馴染んで見えます。こういう、犯人役で何度も出てくる俳優さんって、現場で「常習犯」と呼ばれていたそうです。今回は初犯だけあってあとの2回に比べると比較的まともなキャラクター(笑) ただ、証言を聞いている場面でのちょっとした表情、目の動きなんかに、只者じゃない感が漂ってる。

証言台の被告との対決。この場面のストーンはたしかに復讐の天使という感じです。被告に覆いかぶさるように質問する姿の背後に翼が見えるでしょうか(笑) 「我々の頭も殴ると?」という質問で、被告のダークサイドを引き出してしまう。

最終弁論。弁護側の方が説得力ありました。堂々巡りの状況にたいする住民の苛立ちをうまく代弁している。ストーンは正論に徹します。制度に問題があったとしても、法を無視していいものではない。自ら手を下せば、その時点で法の保護を放棄したことになる。「そのとき、被告自身が社会の脅威となったのです」これ番宣に使ってましたね。しかし、正しいだけのストーンはあまり面白くないし陪審にも受けない。

評決はいちばん軽罪でのみ有罪。判事はそれを受けて刑期終了、保護観察の量刑をその場で言い渡す。ストーン、不服を述べるがさくっと却下される。また怒ってます。

タグでもまだ不機嫌な捨て台詞を吐きます。シフが「スタイン判事の裁定は世論の恐れを体現したな、法システムの不備は二度三度と起こる」というのに対し、

That's not the public's greatest fear.   世間が恐れるのはそんなことじゃない。

What is?  ではどんな?

That Roland Kirk moves into their neighborhood.  ローランド・カークが自分の近所に住みつくことだ。


・・・・・やっぱり、被害者に対して一番怒ってるみたいですね。

 

トリビア。罪状認否のシーンで「事件番号63181...」と読み上げている廷吏は、クリス・ノスの兄弟のマイケル・ノスだそうです。この人、ときどき見かけますがいつもこの役なんですよね(笑)