"Courage Under Fire"『戦火の勇気』

 
1996年作品。Friendly fire =友軍による誤射にまつわる話です。以下ネタバレです。

湾岸戦争後のペンタゴン。ハーシュバーグ准将(マイケル・モリアーティ)のもとで働く陸軍中佐、ナット・サーリング(デンゼル・ワシントン)は過去にアル・バスラの戦闘で部下ボイラーの戦車を誤射した経験がある。このときの指揮官もハーシュバーグ。だからこの事件は二人の共通の傷なんです。

軍は誤射事件を公にしていないので、サーリングは遺族に謝罪することもままならず、いまだにそれに苦しめられている。現場から引き上げて事務仕事につけられた彼には、酒しか逃げ道がない。

サーリングはイラクで戦死したウォルデン大尉(メグ・ライアン)の背景調査を命じられる。史上初、女性のMedal of Honorの候補に挙がっており、一児の母でもあった彼女が受勲すれば、士気と世論の高揚のためこの上ない宣伝材料になると期待されている。   

ところがサーリングが関係者にインタビューを始めると、彼女の戦死の状況についての証言に食い違いがあることがわかる。帰還後ばらばらになっていたウォルデンのチームの生存者、それぞれの証言が別々のバージョンとして再現されます。あーこれ、『羅生門』だなーと思ってると、ほかの映画評にも同じことが書いてありました。

サーリングは独自の調査を続け、真相をつきとめる。そのついでに自分の誤射事件の真相もみずから暴いてみせる。ウォルデンの遺した女の子に勲章が授与され、サーリングはボイラーの遺族に謝罪する機会を得る・・・

最後のシーンで、お互いを知らなかったサーリングとウォルデンに接点があったことが明かされます。誤射事件の翌朝、犠牲になったサーリングの部下の遺体を運ぶ救急ヘリの操縦士がウォルデンだった。その顔をサーリングが思い出す場面で幕。


デンゼル・ワシントンはもちろん素晴らしいんだけど、初の軍人役のメグ・ライアンも主役級。印象に残った台詞は、戦場で腹を撃たれて重傷を負いながら「あたしは9ポンドの赤ん坊を産んだのよ、これくらいなんともない!」。なんとなく納得した・・・!

共演陣が豪華。メグ・ライアンのチームは、ベテラン兵士のルー・ダイアモンド・フィリップス、最期が壮絶。とても若いマット・デイモン、気弱くて繊細な衛生兵の役が説得力ありました。鍵となるシーンがプール脇と湖のほとり、なぜか両方とも水辺で、砂漠の戦闘と対照的です。

デンゼルと絡む方は、マイケル・モリアーティに、ジェリコ・イバネク、Law & Order 4-8でストーンを大ピンチに陥らせた奴。ここではおとなしく将軍の副官を務めているけど、やっぱり腹に一物ありげです。あまりに存在感があるので、私はこいつが裏で何かやらかすのだと最後まで信じていた(笑)

ワシントン・ポストの記者ガートナー。どうにも気になる風貌なんだけど、誰だったかどうしても思い出せなくて調べたら、スコット・グレンという俳優さんでした。『羊たちの沈黙』のジャック・クローフォード特別捜査官、『バックドラフト』の放火魔アックス。なるほど。こういう頬の削げた顔、けっこう好きです。デイビッド・キャラディンもそうだし、クリント・イーストウッドも。。。。節操がないな、自分。

マイケル・モリアーティはLaw & Orderを去ってから2年後。ストーンのころから比べるとややデカくなっています。目算で2割増しくらい(笑) L&O当時の体重が本人の言によると175-180ポンドというから80キロ前後、だからここでは100キロ近い感じですねぇ。まあ、かえって将軍らしい貫禄があるともいえます。

ハーシュバーグ将軍は憎まれ役だけど完全な悪役ではありません。上からの政治的圧力にさらされ、ときには屈しながら、部下を守る気概はいちおう持っている。短気な性格の将軍は、サーリングを可愛がって引き立てようとしているけれど、相手がなかなか分かってくれないのでだんだん苛立ってくる。ゴルフクラブを振り回しながら怒る場面、今にもそのクラブをデンゼルに向かって使いそうではらはらします(笑)

ガートナーと対決する場面もみのがせません。誤射事件当夜の交信記録のテープを入手したと聞かされて、はっと副官の方を見る。あーこれストーン風だわ。テープに入っている「セイバー6、何があった、報告しろ」という自分の声が聞こえて一瞬ひるむところ。部下のサーリングに気圧されて「最終報告書です」とファイルを叩きつけられ、一秒だけ見せるきまり悪そうな顔。これが可愛い!VHS録画なのでうまく止められなくて、このためだけにDVDを買ってキャプチャーしたいくらい。

最後にひとつだけ自慢。砲撃音とその他の雑音だらけのテープの中からハーシュバーグの声だけ聞き分けられる私、自分で少しすごいと思いました・・・(笑)