Law & Order 1-20 The Troubles 「テロリストの悲劇」 ふたたび

 
ゴッドファーザーPARTIII』を何度目かに観ていると、「バティカン銀行に影響力を持つ大司教」の風貌に見覚えが。この人がベン・ストーンと喧嘩しているところをどこかで見たぞ・・・ と思って調べたら、1-20「テロリストの悲劇」に一場面だけ弁護士役で出ていて、ストーンとの火の出るようなやりとりが印象的だったのを思い出しました。

前に感想を書いたときはあまりゲストに着目していなかったんですが、この弁護士とストーンが廊下で議論するシーンは短いながら、これぞ実力派俳優同士という迫力があります。この他にもストーンがFBI捜査官やイギリス大使館付の諜報部員とやり合う場面がありますがここが一番ですね。

ギルデイ大司教/マラハン弁護士を演じている俳優の名前はドナル・ドネリー、アイルランド出身で舞台が主な人らしい。ゴッドファーザーPARTIIIは1990年の作品で、このL&Oエピソード(1991年春)の直前みたいです。(え、そんな昔なのか・・・公開のすぐ後に観ているはずなのに、もっと最近の作品だと思っていたので少しショックでした。)

この人の登場場面は後半開始まもなくです。ストーンがオフィスでIRAの兵士で殺人の実行犯に取引を持ちかけるが、マラハン弁護士が片端から却下するので、ストーンはまず彼を片付けようとする。「話がある」といって部屋の外へ連れ出そうとしつつ、誘うような笑いを浮かべてます(ああストーンの色気って本当にこういう目立たないところにあるんです・・・)。弁護料の出どころがシン・フェイン党だと見当がついているので、利害相反をネタに脅せると確信している、という表現なんだと思いますが。モリアーティが俳優としてドネリーとサシで対決できるのを楽しみにしているように見えなくもないです。

しかしストーンは怒っております。シン・フェインはマラハンの依頼人スケープゴートにして殺人の真相を隠蔽する気だ。マラハン弁護士はその意を受けて、依頼人でなく党の利益のために行動している。職業倫理に反する、その行動が許せない。というストレートな義憤、対、マラハンの「私の仕事に口を出すな」という怒り。頭に血の上ったアイリッシュどうしで、激しい言い合いになる。

Now listen to me counselor. You're not going to run and gun some cheap plea down my client's throat!
よく聞け、検事さん。私の依頼人に、お手軽な取引を呑ませようったって無駄だぞ!

このあたり、モリアーティがドネリーとの身長差を効果的に使っています。証拠について言い争っている間は、ストーンが壁にもたれているので二人の顔の位置はあまり変わらない。しかしマラハンが「裁判で陪審に問おうじゃないか」というと、ストーンがまっすぐ立ち上がって、文字どおり上から脅しにかかります。

...When I present your conduct in this case to the Bar, and your clear-cut conflict of interest, you'd be lucky to have a license.
この件でのあんたの行動を法律家協会に報告してやる。利益相反は明らかだとな。弁護士資格を剥奪されなければ儲けものと思え。

したたかなマラハン弁護士、ころりと態度を変えます。

You want to present some options to my client, go ahead. You won't get any argument from me.
あんたが彼に選択肢を提示したいなら、好きにすればいい。私は反対せんよ。

盛り沢山なストーリーの中に埋もれているけど、達者な役者どうしの芸を見せてもらえるお宝のような場面です。ゲストの演技が見ごたえあるのはL&O のどのエピソードを見ても思うことですが、20年分も見るとそれが当たり前となってしまい(笑)、たまに他のドラマを見ると味気なく感じられてしまう、という贅沢な悩みが発生することに。


その中で最近面白かったのが『ブレイキング・バッド』です。ハマるの遅いですね。しかもジェシー・ピンクマンがお気に入りキャラクターで、その理由が『空の大怪獣Q』でのマイケル・モリアーティに似ているからという・・・ 結局はそこかい!という感じですが、気の弱いちんぴらが大きな犯罪に巻き込まれ、追い詰められるままに自分でもえげつないことをやらかしてしまう様子が本当にジミー・クィンにそっくりで、目が離せないのです(笑)