J.C.カミナー
またもやとりとめなく・・・ The Voyeur を読み直して、今さらながらまたモリアーティに惚れました、なんて話なんですが。
正直いって、ちょっと前までは映像作品に少し飽きてきてました。Law & Order も気に入ったエピソードはほぼレビュー書いちゃったし、その他の映画もマイナーなのを見過ぎて、あんまり面白くない作品ばかりなのに食傷ぎみだったのです。そのせいでL&Oの放送を見てエド・グリーンかっこいいなぁとか浮気しそうになってました。
ですがJ.C.カミナーがマンハッタンを歩き回るのにつきあっているうちに、その人物がリアルに感じられるようになり、彼がその分身である著者にも惚れ直すことになったというわけ。もともと活字人間なので、どうしても映像より書物に反応するんです。
では、カミナーってどんな人物なのか見てみるついでに、ちょっと一緒に出かけてみましょうか。
1993年の時点で年齢は50歳すぎ。身長6フィート2インチ。ダートマス大学出身、フルブライト奨学生としてイタリアに留学したことがある。このへんのスペックは著者自身を少しだけアレンジしてあります。*1
毎年秋にはラルフ・ローレンでツイードのスポーツジャケットを買うのを習慣にしてます。サイズは42か43のエクストラロング。このデザイン、このサイズにこだわりがあるらしく「私はこれを着るよう運命づけられていた」とか言ってる(笑) Law & Orderでのストーンの衣装はブルックス・ブラザーズだというウェブ書き込みを見たことがありますが、私はこのせいもあってラルフ・ローレンじゃないかと思ってます。
買い物のあとはWestbury Hotelのカクテルラウンジでリレを楽しむ。検索すると、同じ名前のホテルがソーホーとミッドタウン・イーストにあり、両方とも近くにラルフ・ローレンのショップがあるようです(1993年当時と同じところかどうかはわからないけど)。リレとは、これも著者のお気に入りの食前酒です。これをロックで、オレンジかレモンのツイストを添えて。
週末には、カーネギー・ホールでクルト・マズア指揮のニューヨーク・フィルハーモニックを聴くのを無上の楽しみとしている(前任のズービン・メータのことは気に入っていなかったらしい)。作中では、チャイコフスキーの交響曲4番を聴きながら殺人事件の謎を解くヒントを得る。カミナーのアパートメントはセントラル・パークを見晴らす位置にありますが、モリアーティ自身も当時カーネギー・ホールの近くに住んでいたらしいです。
マリオンとセントラル・パークでデートするときの描写は美しくロマンチックです。「オータム・イン・ニューヨーク」の風景 ─ガラスと鋼鉄の渓谷─ に、木々の紅葉が映える。しかし二人は仕事上の議論で意見が合わず、カミナーはマリオンに言いたいことを言って歩み去るふりをする。すると彼女が「J.C.?」と呼び止めます。
人生にはまるでハリウッド映画のような瞬間があるものだ。そのとき、オーケストラの音楽は一度に盛り上がったりしなかった。さいしょにオーボエだけが聞こえ、続いてイングリッシュ・ホルンの美しく悲しい調べが、栗の実のはぜる音や焚火の匂いとともに立ちのぼる。私が彼女の方へ動こうとしないのを見てマリオンはこちらへ歩き始めた。それにつれてビオラが痛いほど甘美な旋律を奏で始める。
マリオンはついに彼のもとへやってきて(音楽にはバイオリンとハープが加わって最高潮に達する)、彼女の方からキスするのです。たしかに恋愛映画の一場面のようですが、問題はそのあいだJ.C.はじっと立って待っているだけなこと。まったく、いい年したおじさんのくせに手間のかかるめんどうくさい奴です(笑)
「栗の実と焚火」は、ちょっと季節はずれてるけどメル・トーメの「ザ・クリスマス・ソング」を思い起させます。
エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングによる「オータム・イン・ニューヨーク」はこちら。