Law & Order 4-20 Nurture 「失踪の真相」

 
モリアーティの自伝に、"Dungeon"(地下牢)と題されたエピソードの読み合わせ(スクリプト・セッション)が出てきます。タイミング的には4-19 "Sanctuary"をまだ撮影中の頃。子供の性的虐待の話らしい。被害者の将来についてタグの台詞でどう表現するか、監督と議論したりしています。しかし、放映された中にはこういうタイトルのエピソードはありません。

他のL&O本によると、エピソード4-20は、最初の脚本はロングアイランドで実際にあった幼児誘拐事件をモデルにしていたけれど、社会的反響をおそれたテレビ局が尻込みしたというのが実情だそうです。このため、犯人を小児性愛者の男から女性で善意の誘拐者に書き直し、タイトルも"Nurture"(養育)と変更して撮ったらしい。

急遽変更したわりには、検察側は起訴したくないのに犯人の方が裁判を望むという、ちょっとひねった設定になっています。それに子供の偽証というどんでん返しが加わって話は面白い。特に女優陣がいいです。誘拐犯(3-9でも殺人犯役だった)、弁護人(1-15「欲望の奔流」のビーガル夫人)、養母(3-22にも出てたけど、『ザ・プラクティス』の弁護士役が印象強い)、被害者の少女(賢そうで可愛い!)。

しかし、いかんせんストーンに精彩がない。疲れた感じです。そしてちょっと危うい場面もあり。クレア・キンケイドにオフィスの廊下で話しかけられるシーン、4-13 "Breeder"みたいに笑い出しそうになっているように見えなくもない。

おやっと思ったのが、申し立て審理で、弁護人が被告に質問する場面。弁護人が「実刑もありうることを理解していますね」というところでストーンが映る。普段ならこういう場合、どんなに短いショットであっても必ず動きがあります。身じろぎするとか、視線を動かすとか。でもここでは本当にじっとしている。

それまでのモリアーティは常に、台詞がなくてもまばたき一つで画面を支配していたのに。やめてしまったのか、違う効果を狙っているのか・・・

シフの部屋で三人で話している場面でも、キンケイドに花を持たせようとしているように見えます。「偽証はクレアのせいじゃない」というときの表情もそうですが、次にシフの台詞からキンケイドの台詞に移る途中でまたストーンが映ります。ここもやっぱり台詞に合わせてシフからキンケイドに目をやるだけで、奇妙に受け身な感じなのです。

次のエピソードでもストーンはやっぱり大人しめです。しかし、この静かで動かない感じが最終エピソードの異様な迫力につながっているようにも思えます。