Law & Order 4-4 Profile  「プロファイリングの死角」

 
レイシストの連続殺人犯や、プロファイリングという道具立ては当時の流行りものぽいけど、肝心のプロファイリングはしょぼしょぼで、結局は役に立つどころか検察の足を引っ張るという皮肉な扱いの話。

1993年10月放映分のこのエピソードで興味深いところがあるとすれば、警察パートで司法省への批判が見られること。4-1「犯罪のお膳立て」では話全体がそうでしたが、ここではブリスコーのセリフに2回出てきます。また、FBIのオフィスが立派なのに仕事はしょぼいのもやはり司法省への皮肉でしょう。撮影時点(たぶん1993年夏ごろ)では、「暴力番組」との司法省からの的外れな非難に、番組側もまだ表立って抵抗していたということ。

しかしこのようなあからさまな抵抗は、これ以降は姿をひそめます。秋になって、番組側は当局と対決するのをやめ、取引というか折り合いをつける方法を探り始めたのでしょう。11月に司法長官と会うには、それなりに前から約束をとりつけていただろうから。

いっぽう、モリアーティの方はどうだったか。そのようなプロデューサー達の動きを知らず、単純に「みんなで検閲と戦うんだ」と思っていたような気がします。この頃のストーンが妙に戦闘的なのはそのせいもあるかもしれない。

そして・・・モリアーティ自身が言っているとおり、この頃の彼はベン・ストーンと一体化するくらい入れ込んで演じていた。だからストーンの変化はモリアーティ自身の変化だったともいえる。久々にThe Gift of Stern Angels から引用。

(p. 157)  ・・・・・ベン・ストーンはあまりにも私自身に似ていたので、ときには境界線がわからなくなるほどだった。

このエピソードを見ると、シーズン4の「戦うストーン」は脚本に書き込まれている以上、モリアーティ一人の考えではなく、キャラクターを発展させるための方針であったとも考えられます。

それは良いのだが・・・問題は上に引用した通り、すでに3年間を一緒に過ごしたこの二人が分かちがたく結びついていたこと。そのために、俳優からキャラクターへのアウトプットだけでなく、逆方向のインプットもあったんじゃないかと思ってます。

つまり、一般に思われている「モリアーティの逸脱ぶりがシーズン4のストーンに顕われている」のとは逆に、「シーズン4のストーンの攻撃性、あるいはもともとあった攻撃性を解放したことが、モリアーティに影響を与え始めた」のではないかと。普通なら考えられないことだけれど、この人に限っては、自分でも言っていることだし、ありえる感じがします。



西104丁目で銃撃。ちょっとアブナイ系の目撃者がエル・ディアブロ=悪魔の仕業だという。「じゃ、奴を調べるか」というローガンに、ブリスコー「いや違うな。この犯人は土地勘がある。サタンはジモティじゃない」

同じ銃の銃撃事件が3件あった。バンビューレン警部補とオリベット博士が、連続殺人の疑いがあるからクワンティコのFBI本部に連絡し、プロファイリングを依頼したという。

ブリスコーがせせら笑う「ふん、FBIはデイビッド・コレシュがどう出るかも見抜いてたんだよな」 

これ、司法省へのきつーい嫌味です。放送の半年前、1993年4月のブランチ・ダビディアン事件。司法省の包囲作戦はコレシュら教団側の頑強な抵抗にあい、最後は強行突入と火事で81名の犠牲者を出す惨事となった。ジャネット・リノ長官はこれで強い批判を受けた。テレビの暴力への弾圧はそれを挽回するための人気取り策と見る向きもあったようです。

現場はブリスコーが子供の頃住んでいた界隈。「マンガ本を万引きしてここから逃げる・・・そのころから犯罪心理の研究に興味があってね」(ただの悪ガキじゃん!) 「犯人もここで育ったなら・・・アイルランド系かユダヤ系?」 「そうだ。あのころはそうだった」

マンハッタンの町はこんな風に人種別のパッチワークになってる。そしてその地図は時代とともに移り変わっていく。変わらないのはみな貧しいことだけ。「この界隈も今はアフリカ系とヒスパニック系の町だ」「それがニューヨークさ」 ローガンとブリスコーが並んで喋ってるこの場面いいなぁ。

商店に聞き込み。売れるワインの種類も変わった、今じゃ安物ばかり。レコード店ではマントバーニもバッハも、ビリー・ホリデイも売れやしない。裕福な白人家庭の子供が、警官が撃たれる歌詞の曲を買っていく。何が間違ってるんだろうね。

ブリスコーがまたも嫌味をかまします。「テレビの暴力のせいさ」

犯人があがる。レイシズムを隠さないくせして、裁判で有利になるようアフリカ系の弁護士を雇う。これがジェイムズ・アール・ジョーンズで、役名がホレス・マッコイ。裁判はマッコイ弁護士に召喚されたオリベットの証言で検察不利に。取引しようと弁護士に電話したら、被告は保釈されたとの知らせ。検事たち驚愕する。またちょっとコントロールを失ってる風のストーンが見られます。

判事に抗議に行く。このポングラシック判事は「なにをやらかすか分からない」危険人物だと自分で前振りしていたにもかかわらず、シーズン4のストーンはいきなり噛みつきます。 「間違いを認めないのか?」 「口を慎まないと侮辱罪に問うわよ」 「私を投獄して、大量殺人犯は釈放すると?」

怒りを爆発させそうな判事を、キンケイドが何とかとりなす。前のエピソードでクビにしないでよかったねぇ。判事も同じことを言います。「彼女に感謝することね。あなた、手錠をかけられてこの部屋から出るところだったわよ」

手錠のストーン・・・想像してちょっと萌えました。ジャック・マッコイは法廷で手錠をかけられるシーンがありましたが、ストーンもやってほしかったなぁ。できればマッコイのように威厳を保って両手を差し出すんじゃなく、廷吏に抵抗してあっさり取り押さえられ、後ろ手にかけられてしまうのを希望・・・何を言ってるんだか(笑)