Law & Order 3-21 Manhood 「無情という名の動機」 ふたたび

  
このエピソードについては以前の記事で、主にモリアーティが自分で書いたという最終弁論について話しましたが、脚本もエミー賞候補になるだけあって面白いのでもう一度取り上げたいと思いました。ゲイへの偏見をテーマにした社会派ストーリー。かつ警官が殺される話で、警察&検察の全員がパーソナルな思い入れを持つ設定。ローガンや皆の演技に力が入っている。今日再放送していたエピソードのうち、こちらがシーズンファイナルでもよさそうな名エピソードと思います。

現場で孤立して撃たれてしまった警官。ブリスコー「巡査時代を覚えてるか?」 ローガン「当時は撃たれるなんて考えてもみなかったよ」 

31分署に赴く。ローガン、警部にかみつき、クレイゲンにたしなめられる。翌朝、車の中でブリスコーがローガンに「いったいどうした」という。「相棒が二人撃たれてるせいか・・・自分じゃ考えてもみなかったと言ってるが」それは強がりだろ、と見破ってます。

ローガンの表情がいいです。取調室のシーン、喋ってなくて背景に映ってるときも、怒りではりつめた顔をしている。ブリスコーはいつも通りだけど、相棒の気持ちを完璧に理解している。ローガン、通報の録音を聞いて声を覚え、プエルト・リコ人の目撃者を声から見つけ出す。強く迫りすぎて怯えさせるのをブリスコーがカバーしてる。

売人の生き残りの証言から、現場近くにパトカーがもう一台止まっていたことが判明。ローガン「勤務記録によると、3か月前までニューハウスの成績は完璧・・・」クレイゲン「ちょっと待て、どこでそれを?」 ローガン "A leprechaun brought it." (レプリコーン、なんじゃそれ。と思って辞書を引くと、アイルランドの妖精だそうです。) 成績が突然おかしくなっている。署内に腐敗があり、それを密告しようとしていたのかも。

署長と対決。ローガン追い出される。その隙にブリスコーが署長のデスクを覗き、死んだ警官の相棒の転属願いを見ていた。いいコンビだ!相棒の様子もおかしい。殺された警官のアパートを調べると、彼がゲイだったらしいことがわかる。それが動機か・・・

探りに出かけるコンビ。警官バーで、31分署にいる知り合いと話す。 "There, but for the grace of God..." これ、「他人事ではない」という意味の成句です。1-8「堕ちたヒーロー」でグリービーが言ってました。そのグリービー自身ももうこの世にいないところが(泣)問題の警官たちに見つかり、3人と喧嘩になりそうになる。

ストーン、クレイゲンと一緒に分署へ。警部の公式回答は、警官たちに偏見はあるが、仕事に差し支えるならクビにすると。検察に政治的動機があるとすらほのめかす。警官たちを呼び、話を聞く。みなホモへの偏見を隠さないが、職務には影響しない、と、言うことが警部の公式回答と同じ。しかも検察のリベラル偏向についても同じことを。

リーダー格の警官が「圧力がかかってるんだろ。クリントン支持の奴らから」と言ったときのストーンの反応。「馬鹿なことを」という微笑を浮かべつつ、「政治の話じゃない」とぴしりと言う。だけどこういう部分が「番組の政治姿勢がどこにあるかはっきりしている」といわれる所以ですな。

相棒の警官を呼ぶ。何も知らないといいつつ、署内でみつけたビラを取り出す。
"Manhood and police work. In Romans 13, the Bible tells us we are ministers of God....."

ここに出てくる原題 "Manhood" は「男らしさ」。ローマ人への手紙13章は、国家権力は神の使い(だから従いなさい。税金もちゃんと払いなさい)と言っている箇所。都合よく引用したものです(笑)

このあと、サム・ロックウェル演じる若い警官ウェデカーを落としにかかるシーン。前にさんざん書いたから繰り返さないけど、この場面のストーン、何度見ても飽きない。「ビラを書いたのは誰だ?」というところの顔をみるとゾクゾクします。

裁判。フィリップ・ボスコのゴードン・シェル弁護士があの手この手をつくす。途中で「男らしさ」をめぐる議論にもっていく。精神科医を呼び、ゲイへの恐怖は抑制できないと証言させる戦略。ストーン、殺人を正当化するのか?と質問するも、医者があまりにのらくら返答するので、嘲笑を浮かべ、眉をしかめて首を振り、あっさり引き下がる。あまりに馬鹿馬鹿しい理屈に、陪審も本気にしないだろうと思ったわけですが、これを後悔することになります。

ストーンの最終弁論、こっちも台詞は前に書いたけど、あらためて演技を見ると感情が入っていて(ちょっとやりすぎ?)感がなきにしもあらず。声もでかい。モリアーティが自分で書いた台詞だから、力が入ってたんでしょうね。

熱演むなしく(違うけど)評決は全員無罪。この場面のストーン、何かつぶやいてます。罵りの言葉でしょうか。

タグ。オフィスで裁判記録を読み返しているストーン。シフが入ってくる。「ハイ、アダム」 「何をしている」 「9回のプレーを見直してました。あそこで精神科医を叩き潰すべきだった」 「いや、あれは陪審に無罪評決の口実を与えただけだ」

ストーン 「私の最終弁論が間違ってたのかも」と眼鏡をはずし、妙に可愛い仕草で悩んでます。これも、自分で書いた台詞へのこだわりなんでしょうね。

この次、シフが「頭にシーツをかぶってリンチなど〜」というのは、KKK団の喩えですね。1人じゃできないが、集団になるとやってしまうのが人間。4人の警官、そして12人の陪審。人間の弱さを浮き彫りにした話でした。