Law & Order 3-18 Animal Instinct  「愛の幻想」

 
恋愛妄想のある女性がストーカーと化し、相手の奥さんを殺す話。犯人役の演技以外、そんなに面白い話でもなかったんですが、ある場面だけ気になってます。

犯人はただのストーカーじゃなく素人法律家で、証言台でひと芝居打って検察を陥れるだけの法律知識と実行力がある、おそろしい女です。それなのに、彼女が「教授からの愛の手紙」と信じているのは、教授が留守にする週末、奥さんの研究室の警備を強化する依頼のメモだった。「動物愛護過激派の攻撃にみせかけて殺せ」という指令=自分への愛と思い込む、破壊的な妄想。

可哀想なのはブッシュ大統領似の教授です。この女の妄想によって奥さんを殺され、自分はもう少しで殺人犯として投獄されるところだったのに、そのきっかけが自分が奥さんを守ろうとして書いたメモだったとは・・・!(そのわりにはこの場面、淡泊な演技だったけど。ショックで麻痺してたということか?)

ともかく、女は心神耗弱での取引を拒否して自己弁護を選択。10か月たっても拘置所から棄却請求を出し続け、ストーンを悩ませます。そこでアダム・シフが「真実は醜い、ゆえに預言者は牢へ」と、チャールズ・マンソンを引用するエンディングになります。

気になる場面というのは、クライマックス近く、ブリスコーとローガンが、このストーカー女が教授の別荘近くに借りていたアパートを捜索するところ。彼女が収集した、教授の記念品が大量に。家族と写っている写真。赤ん坊の頃の写真。高校の卒業アルバム。それに靴下(使用済みじゃないといいけど!)ろうそくも飾られていて、まるで祭壇のようでもあります。怖いですねぇ。

急に話が変わりますが、ずいぶん以前にモリアーティの"The Has Been"という作品について書きました。あの脚本の登場人物に、ジャック・C・ファーという男がいます。主人公ローレンス・モントルーの狂信的ファンで、自宅の壁は端から端までモントルーの写真で埋め尽くされている。映画や舞台作品だけじゃなく、学生時代や、どうやって手に入れるのか、子供のときの写真まで。それこそ、使用済み靴下もコレクションしてそうなキモイ奴です。

このストーカー、ニューヨークからはるばるヒッチハイクでやってきます。モントルーに会うと、バックパック一杯の記念品(劇場のパンフレットとか、写真とか)を持ち出して「全部にサインしろ」という。迷惑極まりないし、相手のことはまったく考えてない。自分のプライベート写真を目にして絶句しているモントルーに対し、「ネットでは何でも手に入る」と無神経な自慢をする。モントルーは戸惑いながらも、どうせ暇だからといってサインしてやるんですが。

その次の場面で、ファンとはおかしなものだ、とモントルーは考える。

悲しいことだ・・・他人の人生に取り憑かれてしまう人々がいるなんて。

このセリフにでくわしたときは、自分のことを言われているようでぎくりとしました。当時は彼に取り憑かれてるといっていい状態だったから。いや、今もそうだって?ま、まあそうですが・・・ ささ最近は、ちょっとましになってると思うんだけど(汗)

ただし、靴下とかサインを収集する趣味はありません(笑)私は作品を通して、彼の物語を理解したい。その点では、ただ集めるだけのストーカーとは違ってる(と思いたい・・・ははは)

それでも、人生は完璧と信じているモントルーは、狂信的ファンにも何かの存在意義があるに違いないと考えます。ジャック・C・ファーという名前は、"See far" (遠くを見る)なんだと思います、どういう喩えなのかわかりませんが。自分とかけ離れたもの、自分がなりたいと思ってなれないものを見つめてるという意味でしょうか。

この時点でのモントルーは知らないけれど、ファーの役回りは、後にハリウッドで銃撃事件を起こすこと。上のL&Oエピソードを思わせる展開です。だけど、捕まって裁かれることなくその場で射殺されちゃうのは、ロバート・デニーロ主演の『ザ・ファン』の方に近いです。キモ野郎には、当然の報いでした・・・!