Law & Order 2-21 Silence 「沈黙」

 
「死の処方」でストーンと父親の関係が出てきたので、同じく父親が問題になるエピソードを選んでみました。

ストーリーは弁護士や判事がたくさん出てきて一回では把握しきれない(笑) ストーンは、ほぼいつも通り。欺かれていたことを知って毒づく場面はありますが、ひどく怒っているわけではない。法廷でも、証人には厳しくも思いやりを持って接しているように見えます。特に可愛いシーンがあるわけでもなく。ただタグの台詞にちょっと鍵がありました。

市会議員が殺される。政治家一家の出身、父親は市の実力者だ。ある暴露雑誌が彼がゲイであることをかぎつけて記事にしようとしていた。脅迫もされていたらしい。父親は激しく否定、捜査中に圧力がかかる。ゲイ話を漏らすことはまかりならん。セレッタが呆れます「あの父親は、息子のことを恥じるのが供養だと思ってるのか」

恐喝被害者の一人が脅迫電話を録音していたが、公の場で証言する気はない。被害者父親と相談。証言がなければ起訴できない、申し訳ない。この時点で、ストーン達は父親が裁判を望んでいると信じているんです。ロビネットが助け舟として非公開裁判はどうかと言い出し、起訴。ところが雑誌編集長が裁判の公開を要求してくる。修正第一条(言論の自由)擁護で高名な弁護士を雇ったのだ。(ここで視聴者、えっ、あの登場人物にそんな動機と金があるの?どうして?と悩む。)

民事法廷でのバトルで負け。この判事が面白かった。「市民が他人の不幸を覗き見する自由を妨げることはできない。’自由は秘密裁判を忌み嫌う’私の言葉として、よそで引用していただいていいですぞ」

公開裁判だと証人は出廷しない。ロビネットがまたも策を思いつく。証人が州外にいて出廷不能なら、予備審問での証言を証拠として使える。弁護人たちの怒りをよそに、「証人は引っ越した」と空とぼけて判事に説明するストーンの笑顔。このとき、判事もじっとストーンを見てかすかに微笑むように見える。

テープを聞かされた共犯、取引に応じる。その中で主犯格が被害者父親と会って金を受け取ったと言い出す。すっかり欺かれていたストーン達。珍しく罵りの言葉が出ます That son of a b****.

「最初から話してくだされば、もっと早くから裁判に入れた」「口に気をつけろ、検事。君の資格なぞ、私は電話一本で奪えるんだぞ」ロビネットと顔を見合わすストーン。「ご子息を殺した犯人をかばうのですか?」「君の知ったことではない。口ははさませない」

裁判公開要求のときの弁護士を雇ったのは父親だった。公開裁判にする→証人は出廷しない→公判維持できない→息子の秘密は守られる。(視聴者:なるほど〜!)だが今や、裁判は公開、証言録も採用、ストーンは父親を召喚した。シフ「ああ、だから私のところに電話が」

レストランでオヤジ二人の対決、迫力あります。「16年前、無名候補だったきみを推したのは私だぞ」「あなたに負うところはない」「では友人として、犬たちを呼び戻してくれ(猟犬扱いのストーン達…).....私は息子を守ってきたのだ」「何から?殺人を引き起こしたのはあなたの恥の心だ。犯人を逃がすつもりはない。明日証言しなければ、あなたも侮辱罪で投獄する」

翌日法廷で、父親の苦渋の証言。なかなか言葉が出ないけれど、ストーンは冷静に質問をすすめる。ご子息を愛していましたか、ミスタ・ボーゲル?「そうだ」誇りに思っていた?「あれは市長にだってなれた。頭がよく皆に好かれた.....私は、黙っているのが最善だと」何を?「ゲイであることを」

「息子は.....私に恥をかかせまいとしていた。だが何年も苦しんだあとで、気を遣うのをやめようとしていた。彼自身の人生であって、私の人生ではないのだから」

有罪評決が出て、タグでの会話。

ストーン   Deep down, Ed Vogel truly believes that he loved his son.  心の底では、彼は本当に息子を愛していると信じている。
シフ      And you don't think he did.  違うというのか。
ストーン   Acceptance before love, right? A son is not merely an extension of his father's ego.
        ありのままを受け入れるのが先でしょう。息子は父親の延長じゃないんだから。

かかとを浮かせて、シフにのしかかるように喋ってます。いくら疑似父子といえ、シフは当人じゃないし、上司にそんなこと抗議してもしょうがないと思うんですが(笑)

ストーン   My father wanted me to be a doctor. I went so far as to study organic chemistry.
        父は私を医者にしたがった。だから私は有機化学の授業を取るところまではいったんだが

シフ      And what happened?  で、どうなった?
ストーン   I grew up.          大人になった。 

ビネット、黙ってますが顔が大笑い。

ストーン、理系はだめだったんでしょうね。4-16 Big Bang 「宇宙の終わり」で、物理理論に頭がくらくらしている検察組。ストーンがキンケイドに自然科学科目は Physics for Poets を取ったと言ってます。“詩人のための物理”要するに文系で理科の苦手な学生のためのコースでしょう。対するキンケイドは Rocks for Jocks “体育会系の地学”って感じでしょうか。

ここ、基本的には笑うところなんだけれど、ただ「父は私を医者にしたがった」という台詞、ちょっと気になります。マイケル・モリアーティの父親は医師でしたが、ほんとうは文学や音楽を愛した人だった。医者の道を選んだのは、自分の母親(マイケルの祖母)がそう望んだからだ、と語ったことがあるそうです。The Gift of Stern Angels より。

(p. 282)  父はペンを奪われたチェーホフだった。悲しいことだ。

マイケル自身は音楽の道に進みたかったが、父親があまりに詳しいのでどうあがいても勝てないと感じ、演劇を選んだ、という話は彼があちこちで語っている通りです。シフへの抗議の台詞は、どこまで実感がこもってるのか気になります。


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最後はほんとうに笑うところ、クレイゲンのジョーク! 初動捜査でローガンが「そのうち目撃者が出るかも」というと「そうだな、そのうち俺にも翼が生えて飛べるようになるかも」 ふわふわの羽を生やしてぱたぱたと飛んでいくクレイゲンを想像して爆笑してしまいました。