Law & Order 1-15 The Torrents of Greed 1 「欲望の奔流 前篇」

 
放映時に観ていませんでした・・・このダブルヘッダーを見逃してたんではストーン・ファンとしてモグリと言われても仕方ないですね。

正解の出ない社会問題を扱う他のエピソードと違って、マフィアの親玉が純粋な悪として描かれている。何の説明もなく、悪は悪。だから見ている方はリラックスしてストーンの戦いぶりを楽しめばいい。シーズン1らしいストレートなエピソードだと思います。

雑貨店主が暴行される。目撃者の、浮浪者で哲学者のエドガー・フーバー氏がいい。すぐ殺されちゃうけど。*1 実行犯ピレフスキー、フロント企業の社長ゾルタが捜査で浮上。密造タバコが関わっているらしい。(税金が一箱35セントというところに時代を感じます。)倉庫の持ち主の不動産業者ビーガル、これがマフィアのドン、フランク・マスーチの義弟。

分署で警察・検察の会議。グリービーがプレゼンするんだけど、黒板を使ってるのがこれも時代だなぁ。ここでクレイゲンが「ボーナスにマスーチもいけるぞ」と焚きつけます。この話、クレイゲンが元凶だったのか!ストーンは「それは無理・・・」と、その場では懐疑的なんだけど、これがヒントになったのか、罪状認否のあとで義弟の弁護士にマスーチを売れと持ちかけます。当然拒絶される。

ニュースでフランク・マスーチの弁舌を見るシフとストーン。マスーチは高価そうなスーツを着てます。「フランキーの奴、めかしやがって」 「君もモノグラム入りのソックスを真似ていいぞ」 オーダーメイドのイニシャル入り靴下ですか!ストーン、ドミノ倒しの話を始めて、マスーチを捕まえる計画を明かします。

この場面、部屋の照明を抑えて片側から光が当たるようにしてあって、ドン・コルレオーネの書斎(『ゴッドファーザー』でみんながやってきて’ビジネスの話’をする部屋)みたい。二人で静かーに話してるんだけど、それがドンとマイケル・コルレオーネの会話を思わせる。ストーンの野心満々な様子はマフィアも顔負けです。こういう、手柄に逸っているときのストーンが好き。顔はあいかわらずの能面なのに内側で静かに興奮してるのが伝わってきて、色気すら感じます。

「ストーンの色気がどこにあるか」については諸説あるところでしょうか。コメント欄では女性の証人に優しかったりするのが人気のようですが、私にとってはこういうテストステロン満載なところが一番。3-21『無情という名の動機』の巡査を落とすシーンなどでも同じように押し殺した興奮ぶりがうかがえてゾクゾクするんですが・・・ちょっとマニアックに過ぎるでしょうか?

表向きは冷静な法律家のくせに実は野心家なところはストーンの弱味であり、2-13『知略の攻防』でアーサー・ゴールドにつけこまれたりする原因でもある。今回のエピソードもあれと同じ経過をたどるわけです。

監視と盗聴でトラック組合委員長殺人のネタが出てくる。フロント企業社長ゾルタとドンの義弟ビーガルにそれぞれ取引を持ちかける。「フランクが指示を出したと言ってた」この言葉にストーンが座り直すと、机の下でカツンと音がする。

(脚を組みかえたときに靴が当たった音でしょうか。こういう見えないところになぜか反応してしまいます。)

だけどシフは懐疑的。死体もない、どうやって起訴する?ストーン、「ドミノは倒れ始めてます」。今度は下手人と取引(この場面、なぜ弁護士がいない?)。それでいきなりフランク・マスーチ逮捕。本人は裁判所前でのインタビューでシチリア系市民への偏見だと主張する。インタビュアー、今度はストーンに質問を。ここぞとばかり見得を切るストーン。

"The laws of the state of New York draw a line between civil and non-civil behavior. Some people step over that line. Agaist those people, yes, I am prejudiced."
ニューヨーク州法には、市民のとるべき行動ととるべきでない行動がはっきり定義されている。それを踏み越える者には、その通り、私は偏見を持っている」

失礼。と言って身をひるがえし、階段を駆け上っていく。うわぁぁカッコよすぎ。ここまで決まるとかえって危うい感じがします。

法廷もストーンの独り舞台です。被害者の妻、フロント企業社長ゾルタ、義弟ビーガルをドミノの駒に。被害者が行方不明になっていること、トラック運送のシェアで被害者が被告の事業の障害になっていたこと、被告が殺害を指示したことを立証する。

ビネットが話を原点に引き戻そうとする。もとは雑貨店主への暴行で、義弟ビーガルの差し金。取引のせいで被害者家族は落胆している。シフは敗訴が検察の威信にかかわることを心配。しかしストーンは強硬で、どっちの言うことも聞きません。

下手人の証言。ガロットの話まではよかったが、反対尋問で完全にひっくり返される。殺人があったと言ったときには入院していた。偽証だ!検事が意図的に偽証させた、制裁を。裁判長、これは陰謀です。

補強証拠は?延期続行してくだされば。でもほかに証拠はないのは明らか。判事は棄却請求を認める。マスーチは一事不再理、義弟ビーガルは取引済で、二人とも大手を振って放免。

グリービーが痛いところを突きます。"You got greedy. They knew it and they set you up." 「あんたが欲を出しすぎた。奴らはそれを知っててハメたんだ」

ローガンはもうちょっと無邪気に、取引をチャラにすればいいと言います。"They don't play by the rules, why should we?"「犯罪者相手にルールを守ることはないのでは?」 ストーン "Because that's our job."「ルールを守るのが我々の仕事だ(から、そうはいかない)」

バルコニーからマスーチを見下ろし、復讐を誓うストーンで次回につづく。うわははは次が楽しみ!こういう何も考えなくていいストーリー好きだわ。
 
 
 

*1:この人物が語る「欲望はほとばしる奔流」という言葉は、Dhammapada「法句経」からとったらしい。だけど別にストーリーに上座仏教は関係ない・・・と思う。