Law & Order 3-7 Self Defense  「撃つ権利」

 
昨日の記事からのつながりで、憲法修正第2条が話題になったストーリーがどこかにあったな・・・と思って探してきました。

セレッタ降板の前振りエピソードのようです。「警官による正当防衛事件の専門家」ということにしてストーンと対立させ、法廷で証言もさせることで見せ場を作ってある。ポール・ソルビーノは実生活でも銃に縁のある人のようだから適格というべきか(ここにもう一人、俳優という枠にはまりきらない人がいます)。

刑事パート、セレッタとローガンが質屋の店主に最初に話を聞いたときに、銃を持っているか質問します。ギリシャクレタ島からの移民で訛りの強い店主の答「持っている。銃を所持する権利もある。修正第2条だ」ああ、これが今回のテーマだな、とわかります。

ローガンは強盗二人を射殺した店主に疑いを抱き、最初から殺害を狙っていたと考える。セレッタは正当防衛説。この後、防犯ビデオのテープが見つかったり、店主の過去の武勇伝が明らかになったり、なかなか内容の濃いストーリー展開です。うっかりしていると置いていかれる。

防犯ビデオ映像がマスコミに漏れて、例によって大騒ぎになる。シフは取引で済ませろというのですが、被告は受け入れないし、ストーンは復讐のための殺人は認めない立場を貫きたい。「命令に背く気か?」と言われ「いや、あなたが決めてください」って、表面上はシフに決断を仰いでるけど、実質は上司に自分の意見を呑ませてますね。私もいちどボスにこれをやってみたい、"It's your call." って(笑)

公判。防犯ビデオのテープは強力な証拠と思われましたが、バックファイア気味。被告人の証言「ギリシャでは銃を持てるのは警官と兵士だけ。だがアメリカでは、誰でも銃を持つ権利がある。ミニットマン独立戦争当時の民兵)のように」これを移民である店主の口から言わせるところがミソですね。

次の場面でロビネットがこれを評して「ママとアップルパイ」(アメリカ的価値の象徴)と言っています。この、外国移民にアメリカを称賛させる、という手法はどこかで見たと思ったら、20-3 Great Satan 「愛する国に忠誠を」でした。シリア移民のサミール(サムと呼んで!)が、自分がいかにアメリカの自由を愛しているかについて長々と証言する。文化を異にする人から自分の国の価値観を褒められるのは、何人であっても面映ゆいが誇らしいし、いろいろと考えさせられるものです。

ストーンの最終弁論。彼が"law"という言葉を発音するときにはいつも特別なイントネーションを使って長く引き延ばします。今回は"the law allows" というところがまるで詩の朗読でもしているようです。

But the minute he crossed his threshold, to kill Garland Booker, he stepped far beyond where the law allows the use of physical deadly force, he became the aggressor.
彼が被害者を殺そうと店の戸口を越えた時点で、法の許す力の行使の限界をはるかに超え、正当な理由のない攻撃者となったのです。

おや、この言葉もなんかデジャビュ・・・こちらは4-2 Volunteers 「善意の人々」のストーンの最終弁論で、シーズン4の番宣にも使われていた、"he became the menace to the society." 「社会の脅威となったのです」でした。あれもvigilantism(自警のための暴力)がテーマでしたね。

Finally, you must ask yourself, do you want to live in a city where an ordinary citizen is allowed to run the streets with a gun, looking for someone on whom to wreak vengeance?
最後に、自分に問いかけてみてください。普通の市民が、復讐する相手を探しながら銃を持って走り回るのが許されるような街に住みたいですか?

(この主張と、AWB法に反対のモリアーティは絶対に重ならない。だから、たとえ94年にシーズン5をストーンで撮り始めたところでうまくいかなかったと思います。右派の検事が活躍するLaw & Order... ありえない)

ストーリーの方は、評決は一勝一敗です。店の外まで追いかけていって撃った方だけ第2級謀殺で有罪。翌朝、裁判所前で新聞を読んでいるロビネットにストーンが合流します。ここの会話、聞いていて字幕にしにくそうだなと思いました。

Costas filed his appeal. Public's rallying around. A defense fund's been set up. Even the gun lobby's kicking in.
被告側が上訴しました。世論は侃々諤々です。弁護費用の募金が集まってて、銃規制反対団体も動き始めてます。

I know twelve citizens who won't be joining the crusade.
同調しない市民が少なくとも12人いるぞ (陪審のこと)

Eight. Four of the jurors were on the morning news saying they felt pressured to convict Mr. Costas.
8人です。今朝のニュースに出ていた陪審員のうち4人が、被告を有罪にするように圧力を感じたと言っていた。

Jury's remorse. It rises with the unpopularity of the verdict.
陪審が後悔を感じるのは珍しくない。評決が不評だと特にそうだ。

Their heads aren't the only ones on the block.
恨まれてるのは陪審だけじゃない、我々もです。

Unless the victim qualifies for sainthood, we shouldn't prosecute? Lyndon Johnson tried governing by opinion polls. It didn't work.
被害者が聖人じゃない限り起訴はするなと?ジョンソン大統領は世論調査を元に政策を決めようとしたが、上手くいかなかったぞ。

逐語訳にしてみましたが、字幕はきっとこの半分くらいの長さにしないと収まらないので、大変だと思います。

「ママとアップルパイ」もそうですが、全体に字幕翻訳者泣かせと思われる台詞がたくさん。シフの台詞だけ取っても「あのビデオがマンハッタンからオルバニーまで流されてた。ザプルーダ・フィルムより多い」前半はニューヨーク州中で放映されたの意味。後半はJFK暗殺を偶然撮っていた有名な素人ビデオ。「銃ロビーはゲイツを聖者に仕立て上げた」ガン・ロビーは全米ライフル協会に代表される、銃規制反対の政治勢力。バーナード・ゲイツ事件は地下鉄の中で黒人少年を撃った男が一時ヒーローになった事件。こんなのをどう訳せと・・・録画がないので字幕がどう処理していたのかわからないんですが、翻訳者の方、お疲れ様です。