Law & Order 1-8 Poison Ivy 「堕ちたヒーロー」


最後のストーンの顔が印象的で、私はそっちに気を取られて忘れてましたが(笑)ロビネットが活躍するエピソードですね。被害者はアフリカ系、対して被告の警官パリシはイタリア系。こうくれば、どうしても政治的にデリケートな問題になります。自身がアフリカ系のロビネットが、雑音に悩まされ、迷いながらも冷静に捜査を進める姿に共感が持てます。

被害者は名門プリンストン大の学生(だから原題がIvy)、ハーレムのヒーローでした。彼が属していた教会を訪ねるロビネット。牧師「ブラザーのため正義が行われるようにしてくれるな?」「私は検事補です、肌の色は・・・」「関係ないか。これは見損なった。君はパーク・アベニューの96丁目より南の育ちのようだな」(ハーレムじゃなく中流階級の出身だろうの意味。たしか、ポールは本当はハーレム出身でしたよね。)

ビネットは捜査を続け、被害者がコカイン売人だったことを突き止めてしまう。裁判になれば、弁護側が被害者のダークサイドを明るみに出すかもしれない。悩むロビネット。自分は裁判を有利に進めたいのか、それとも無意識に被害者に肩入れしているのか。別の参考人には"Oreo"呼ばわりされもする。白人におもねる黒人を罵る言葉です。

裁判所前では厳罰を求める"We want justice!" と警官支持の "New York's fighter!" の両方のデモが行われています。状況があまりにも政治的になってきたことからシフは取引を指示。パリシは拒絶。裁判うまくいかない。ロビネットはパリシの相棒を攻めることを提案、これがブレイクスルーに。

相棒が証言し、検察側が現場を知る証人を呼ぶことを明らかにしたところで休廷。その夜、不利を悟った被告は自殺。

ハーレムの長老派教会で被害者のメモリアル。ストーンとロビネット、出席してます。「彼は正しいことをなしたが、その方法を間違えてしまった」という牧師の嘆きが心を打ちます。この場面のステンドグラスが印象的だったので調べると、155丁目に実在する教会のようでした。グーグル・ストリートビューで、外側からだけどステンドグラスも見られます。

なぜ教会に言及するかというと、この話、人種だけじゃなく宗教も少しからんでいるからです。パリシはイタリア系でおそらくカソリック。それが自殺したのですから、自分の教会でメモリアルはやってもらえない。同じカソリックである相棒*1 や刑事・検事*2 には二重に辛い話です。これが次の会話につながります。

夜、珍しくグリービーがストーンを訪ねてきます。「あんたに礼を言いたくてね」 「警官相手はもう勘弁してほしいよ」というやりとりがあって、グリービーが、

No, I wouldn't let go. Because 'there but for the Grace of God go I,' or any cop. You get caught, you get prosecuted.
いや、容赦はしない。神の前では、誰でも同じことだ。捕まったら、裁かれるべきなんだ。

'there but for...' の部分は、「神の恵みがなければ、自分もああなっていたかもしれない=他人事ではない」というような意味の成句です。

これを聞いたストーンは微笑します。 Didn't know you were a philosopher, Max. 君が哲学者だったとはな、マックス。

グリービーも微笑して、 Just an ex-altar boy with a gun.   もと侍者、いま警官ってだけさ。

二人の間に流れる理解と共感。ストーンがすごく優しい顔をしています。彼も子供のころ侍者をやってたのでしょうか。

(というかマイケル、前半でロビ=ブルックスに見せ場を取られたから、対抗してここでとっておきの顔を使ってるでしょ!「最後にこの顔を見せておけば、ファンはそれしか覚えてない」って。その通りよ。でも、その顔、好きだから許すけどね。)

Alter boy = 侍者とは、カソリックのミサで司祭の助手を務める子供のことです。ローガン刑事も、CIのゴーレン刑事もやはり自分のことをex-alter boyと言ってたことがあります。カソリックの教義、刑事や検事の信仰、はL&Oで繰り返し出てくるテーマでもあります。米国全体ではマイノリティであるはずですが、ニューヨークの警察や消防にはアイリッシュが多いために、L&O登場人物もカソリック率が高いのは自然といえます。

しかしシーズン1のメンバーはいくらなんでも偏りすぎな感じがします。警察組は全員アイリッシュの設定。検察はストーンがそうですね。また、グリービーと交代したセレッタもイタリア系だからカソリックには変わりありません。ブリスコーはユダヤ系だがやはりカソリック。L&Oチームの宗教的ダイバーシティが向上するには、シーズン4まで待たなくてはなりません・・・。



*1 はっきり言及されていないが、ルックスはアイリッシュだし、「子供が5人」といえばおそらく。
*2 グリービー、ローガン、クレイゲン、ストーン。