Law & Order 15-6 Cut 「美の追求の果て」

 
美容整形をめぐる話。いちおう社会問題ですが残酷な殺人が起こるわけでもない地味なプロットで、たぶん誰も覚えていないエピソードじゃないかと思います(しかも、放送とタイミングずれてるし)。しかしこの次の15-7「知事の恋人」と同じく、やっぱりゲストの演技がイイんですよね。

ただの医療過誤を殺人に仕立てられてしまう形成外科医を演じているのはブルース・アルトマンという俳優。何度もゲスト出演している常連のひとりです。ハンサムだし押し出しもあるんだけど、シリアスに演技していてもどこか抜けたコミカルな感じを持っている人で好きなんです。

最初に出てきたのは1-15「欲望の奔流 前篇」で、マフィアのドンの義弟役。ストーンに乗せられてドンを裏切り、後篇で殺されてしまう。次が4-10「幸せを求めて」(ロシア花嫁の話)の弁護士。「アジア人の目撃者はヒスパニックの顔を識別できない」というトンデモ学説を持ち出して、ストーンに「あんたが明日中国人に殺されたらこんなに嬉しいことはない」と暴言を吐かれる(笑)

この回の医者役は、憎たらしいし記録の改竄もかなり怪しいけれど、単純な悪者ではない。セリーナ・サザリンに豊胸を奨めたり、仕事熱心なのは違いないし。自分の身に降りかかった災難が自分で招いたことなのを理解できず、検事局まで押しかけてきて弁護士の愚痴を言ったりする。熱血漢だけどおそろしくポイントがずれてるだけ、という憎みきれない悪役に仕上がってます。

この人物とマッコイが検事局の廊下でやりあうシーンが見どころでした。弁護士抜きで話すのはまずいといいつつ、なぜ相手をしているのかマッコイ・・・・・と思ってると、一緒になって怒鳴り始めます。おやどうしてここでマッコイが自制を失うのだ、ストーンじゃあるまいし。

これってマッコイの側もかなり理不尽な起訴をしているのでその後ろめたさがあるのかも、と思いました。この「ポイントのずれた熱血漢」の中に自分の姿を見たのか。

そもそも美容整形を妊娠中絶と同列に論じるなんて、かなり馬鹿馬鹿しい話。この頃になるとLaw & Order のフォーマットは完全に確立されているので、弱い話もそれなりの社会派ドラマにできてしまうところが問題だと、作ってる方も気づいていたのかも。L&Oの水戸黄門化。それを救ったのが、脚本の軽さを逆手にとったようなアルトマンの微妙に笑える演技だと思いました。