Law & Order 2-17 Sisters of Mercy 「いたわりの心」

 
ストリートチルドレンの収容施設を舞台にした話。とても若いケリー・ウィリアムズ(「ザ・プラクティス」「ライ・トゥ・ミー」)の演技が印象的ですが、本筋は別で、理事長(ウィリアム・H・メイシー)が立場を利用して入所者の少女に性的関係を強要していたという話。これをレイプとするには、法的にかなり拡大解釈を要する。ストーン(巨大に着ぶくれている)がなぜ突然そう主張し始めるのか、は説明されない。1-2「隠された過去」で「レイプが怖ければ地下鉄に乗るな」と発言してマスコミから批判を浴びた検事なんですけどね。どうしちゃったんだろう。

被告弁護人が当然のように棄却を申し立てた後の、検事局の三人で喋るシーンがけっこう長い。判事が即時棄却としなかっただけでもすごい成果、半分目的を果たしたようなものだ、と逸るストーン。シフにいろいろと否定的なことを言われても超ポジティブです。「被害者がどう感じたか」が重要なんだ。法がそう考えないなら、法を変えなくては。

シーズン1からするとすごい進歩です、ストーン。しかしシフの主張の中で一番現実的に重みがあるのは「裁判になれば施設は閉鎖されるかも」という点です。

法廷にて。被告側は、彼女の売春の前歴を強調し、所長との関係で特別扱いを受けていたことは要するに売春であると主張する。それに対し検察側は被害者が追い出すと脅されたこと、退所した少女たちはエイズや過剰摂取で死んだりレイプされ殺されたりしていることを示す。

ストーンの最終弁論、短いけどよかったと思います。銃をつきつけて脅したわけじゃない、だが「追い出す」という脅しは死に等しいことを被告は誰よりもよく知っていた。評決は有罪。判事の裁定待ちとなります。

ストーンは今のうちに取引しろとシフに言われて「ありえない」とか反抗してます。勝利に酔ってるのか、ここも何かクスリやってるんじゃないかというくらいハイな感じの顔です。弁護側がコンタクトしてきますが「取引なしだ!」。 シフ、ため息をつきます。

結果は棄却請求の却下。画期的な判決です。詰めかけたマスコミを前に、ロビネットと勝利の会話を交わす。

Get out your soundbite, Ben.  テレビ用コメントを用意しておいた方がいい、ベン。
Yeah, nothing sells like sex.  セックスネタは受けるからな
 (ロビネットと握手する)
Don't sell yourself short - everybody loves a winner.  ちゃんとアピールしないと ── 勝ったんだから。
Yeah.   そうだな。
You know it'll probably be reversed on appeal.  控訴審で覆されるかもしれないが。
Probably. But maybe the legislature takes a look, rewrites the law.  多分な。だが法改正のきっかけになるかもしれん。

レイプ事件はシーズンに1回は出てきます。1-14「レイプの真相」ではゴシップ記者が被害者で、この人は裁判でも世間からもさんざんセカンドレイプに遭いました。2-8「裏切り」はキャンパスでのレイプ。被害者はやはり信じてもらえず「何のために裁判を」と怒る。ストーンは謝罪する。

これまでの話は「被害者にも落ち度があった」というお決まりの議論が繰り返されるという、すっきりしない展開でした。2-17になってやっと、被害者の心情が問題なんだとはっきり示されたことは進歩だったと思います。

この後は3-6「屈せざる女」オリベット博士が被害者になる話。ここでもまたオリベットの落ち度(性的なものではない)がつつかれましたが、やっとラストの逆転でスカッとする脚本が出てきました。しかし4-3「不協和音」では、犯人のロックスターは有罪になるものの、被害者の扱いにはやっぱり冷たいものが・・・という意味で後退した感があります。

なぜレイプに限ってそれがお決まりなのかは興味深い。2-8でシフがそのヒントを提供しています。「女性陪審員は被害者と距離を置きたいがために、被害者の話を信じようとしない」 自分を被害者より高みに置くことで安心感を得ようとする心理機制は想像がつきます。「被害者は不真面目だったからレイプされた→自分は真面目な女性だから安全だ」と思いたいということですね。ただこれだと女性の心理しか説明していなくて不公平な感じはします。

男性がレイプ被害者に冷たいばかりでなく、積極的に貶めたがる理由は?罪悪感と関係があるんじゃないかと思います。「被害者は不真面目だったからレイプされて当然だ→男ばかりが責められるべきではない」

レイプほど顕著でなくても、何か悲惨な事件が起こったときに被害者を責める傾向はマスコミにもネットにもみられます。不安に対する人間の原始的な反応なんでしょう。「あんな目にあったのは、被害者の側にも落ち度があったからだ→自分にはそんな落ち度はない、だから自分は安全だ」


トリビア。この話にはデビュー前のミラ・ソルビーノ(セレッタ刑事役ポール・ソルビーノの娘)が端役で出ていたそうですが、そのシーンはカットされたそうです。エンドロールにもクレジットは出てきてませんでした。