歌うベン・ストーン5 「ペーパー・ムーン」

 
先週放送分のシーズン11-15の冒頭で、ブリスコーがエド・グリーンに「俺はミュージカル版に出る」と言ったのにみんな反応したんじゃないかと思います。
見たいぞ、ミュージカル版Law & Order。この二人で歌ってほしいよなぁ・・・夢の競演ですよね。

で、私としてはこの豪華キャストによる警察ミュージカルの幕間に、法廷シーンも入れてほしいと思っているわけです。
もちろん検事はベン・ストーンで。

ストーン時代でいうと、2-11「舞台を降りる時」がブロードウェイの話でした。中盤、弁護人の「陪審は(検察側証人と被告の)どっちを信じるかしら」というセリフに対して、ストーンが「私だ」と答える場面があります。

この"Mine." という一言から思いついた場面です。最終弁論の途中で、ふと歌いだす検事。


法から離れて 何が本物でありえよう
その庇護なしには この世は借りものの停車場
つかの間のうたかた だけれども
あなたの笑みで そのうたかたに虹が宿る

そういって陪審員席の方を向くのをキューに、12人がいっせいに楽器を取り出します。
前列の6人はストリングズ、後列はホーンセクション。ロビネットがタクトを振っております。


月は紙張り 造りもの 海は厚紙細工でも
もしや私を信じたら 嘘もまこととなるものよ

判事席にはドラムセット。ベースは・・・被告にやらせますか。弁護人にはギターを持たせて。
速記者のタイプライターはいつのまにかキーボードに変わっています。


法がなければそれはただ 安キャバレーの空騒ぎ
法がなければそれはただ 仲店通りの流行歌

歌いながら席の後ろのバーをひらりと飛び越え(できるか?ストーン)、傍聴席の女性をつかまえて一緒に踊る。


バーナム&ベイリー・サーカスの 嘘で固めた世界でも
もしや私を信じたら 嘘もまこととなるものよ


曲のイメージとしてはフランク・シナトラのバージョンが一番近いかなぁ。http://youtu.be/YM-0US4VPsQ あと、ナタリー・コールのもいい感じです。

歌詞は普段は自分で訳していますが、今回のみ田島博・山下修一訳の『欲望という名の電車』に出てくる訳詞を使っております(最初の段落と、「愛」と「法」をもじった箇所を除く)。あまりに見事なのと、歌を知るよりも先にこちらを読んでいたのでイメージが固定されてしまっているせいです。



[追記] 『欲望という名の電車』の上記の版は新潮文庫ですが、ものすごく古い。漢字が旧字体だったりします。歳がばれると言われる前に言い訳しておきますと、実家の書棚に昔からあったもので私が買ったんじゃありません(笑) いま書店で手に入る新潮文庫の版は小田島雄志訳で、「ペーパー・ムーン」とカタカナを使ってあります。

この戯曲は『ガラスの動物園』とおなじテネシー・ウィリアムズの作品であります。映画はマーロン・ブランドビビアン・リーの共演で、こちらの方が有名でしょう(ブランドが「ステラァァァ!」と叫ぶシーンとか)。「ペーパー・ムーン」はビビアン・リー演じるブランチ・デュボアがクライマックスの直前にお風呂で歌う「甘ったるい流行歌」ということになってます。

ブランチは没落した荘園のもと令嬢で、その点では『ガラス〜』のアマンダ・ウィングフィールドと似ているけれど、彼女の世界は最後に破滅してしまう。ブランチの妹ステラは同じ境遇ながらもっと現実的な人物で、粗野なポーランド移民のスタンと結婚して生き抜いていく。ステラの後日談がアマンダということになるかもしれません。