Law & Order 1-17 Mushrooms 「ゲーム・マスター」

 
名物、ストーンの脅し、珍しくコミカルな場面、見ごたえある法廷シーンと、よくばりなエピソードです。

のちのバンビューレン警部補役、S.エパサ・マーカースンが被害者の母親役で出演。また、ダン・フロレクが好きなエピソードだと言っていたのでクレイゲンにも注目。子供二人が犠牲になった事件で一番こたえているのがグリービー。彼の苛立ちのせいで前半は緊張感のある会話がたくさんあります。原題はクレイゲンが口にするゲームの名前です。

捜査で武器を提供した少年、実行犯の少年が出そろいます。実行犯の弁護人が、家裁に移すなら黒幕の名前を教えるといいだす。第1級故殺、家裁じゃなく高位裁判所で、年少者に対する最高刑で取引。麻薬の元締の名前が出てくる。不動産がらみの金銭トラブルらしい。赤ん坊がいるなんて聞かなかった。ケイってやつの住所をもらって、風穴を開けてやれと言われただけだ。たぶん俺が場所を間違えたんだ。

ビネットが新人に、ケイという名前だけを手掛かりに500人分のリストを調べろといってる。新人君は有能だったらしい。次のシーンで、ロビネットは不動産屋のケイ氏をつきとめている。事件はジェイコブズ・プレイス。標的の住所はジェイムスン・プレイス。

裁判所の前で、シフ、ストーン、ロビネットの3人でプレッツェルを分け合うシーン。うまそうです。でも話は殺伐としてる。元締の金を使い込んだ不動産屋が狙われ、実行犯の少年が住所を間違えて赤ん坊を撃ち殺したということらしい。

ストーン、ケイ氏に会いに行く、口を割らないのを脅しにかかります。この酷薄な表情、これぞストーンという顔で好き。3-21『無情という名の動機』で巡査を落とすところとか、1-3『親失格』の法廷シーンとかと同じ。目を見開いたり、大声を出したりしないのになんでこんなに恐ろしいんでしょう。

"If your client doesn't start talking now, I will tear his life apart. Real estate boards, clients, skeletons in the closet (snaps fingers) light of day - guaranteed."
「今すぐに話さなければ、人生を滅茶苦茶にしてやる。不動産業界や顧客に、うしろ暗い秘密を(指をぱちんと鳴らす)ぜんぶ白日のもとに − 保証する」

話し始めは弁護人に向かって喋ってるけど、「滅茶苦茶にしてやる」から視線が本人に向く。指を鳴らすところでは手だけじゃなく全身が動きます。

ケイ氏、弁護士と目を合わせてから喋りはじめる。マネー・ロンダリング用に預かった金を事業に突っ込んだら溶けてしまった。だが脅されたと証言する気はない。話は聞きましたよ、といって立ち上がると、ケイ氏が意外とちっちゃいので、ストーンが巨大に見える。怖いいいい。でもケイ氏は元締に殺される方が怖い(そりゃそうだろう)

いつもの通りロビネットが知恵を出す。不動産屋の証言なしでいいから元締を起訴しましょう。やつが拘留されればケイも気が変わるかも。ここのストーンの答が"Sold"。競売のときと同じ。日本語だと逆に「(そのアイデア)買った」となるところ。

この元締イングラムズがなかなか男前の、物腰も紳士だからギャングに見えないの。陪審はきっとだまされるだろう。ケイをなんとかして証言させたい。シフ、脱税でもなんでもいいからつついてみろという。IRS(内国歳入庁、日本の国税庁にあたる)か!

IRSでは、悪質な脱税は実刑にしたい。ストーン:財産はぜんぶ没収していいが、刑務所には行かせないでくれ。いつもの「必死になって喋る時」の、上から覆いかぶさるような姿勢で喋ってます。IRS氏「わかった。書面で出せ。何かあったら君も道連れにしてやる」といって去ってしまう。ここのストーンの反応に注目!かかとを浮かせた前のめりのまま「あ・・・え?え?」って感じで顔だけついていってる。めずらしく笑わせる演技です。

またケイ氏にとりかかる。脱税で起訴されたら10年くらう。だが私がIRSに言って不起訴にさせたら?財産だけ全部没収させたらどうなる?つまり逃げ隠れできない状態で元締の復讐にさらされる。証言すれば証人保護プログラムに。弁護人「ハメたな」と怒るが、また懐中時計が出てきます。オファーの有効期限は15秒だ。いじましいケイ氏、せめて別荘だけでも。10秒。メルセデス(セコい!)。5秒。取引成立。

裁判にて、実行犯の少年の尋問。元締から住所を書いた紙を渡された。ストーン、リーガルパッドに住所を書いて見せる。315 Jameson Place.
警察の報告書を渡して読むようにいう。黙っている少年。きみは字が読めないのだね。衝撃の事実。少年は字が読めないので住所を間違えた。それが悲劇の原因だったのだ。陪審、被害者の母親、被告弁護人、みながショックを受けている。救いのない真相をあばいて見せたストーンの顔にあるのは 怒りと・・・・・悲しみ。視線を下げたまま「質問は以上」と言って画面から消える。

ところで、「画面から消える」ところの演技って、役者さんによっていろいろ工夫していて面白いと思います。たとえばL&Oクリミナル・インテントのビンセント・ドノフリオ(ゴーレン刑事)は、席から立ち上がる時に左右にゆらぁ〜っと揺れながらフレームから出る、すごく特徴的な動きをたまに使ってます。何か思いついた、あるいは思いつきそうになってるのを表現してるんです。

消えるときの視線の方向でも印象がずいぶん変わりますね。プライムのシーズン4、ストーンが辞める直前、『サンクチュアリ』のラストではシフに怒ってて、カメラに正面顔を向けたままドアから出ていってしまう。最後のエピソード『旧知の友』では逆に、ドアを出ていく前に顔だけ先に外へ向けている。今回、下を向いたままフレームアウトしたのを見て、それを思い出しました。

最終弁論。いつもほど声を張り上げてません。やっぱり下を向いて、陪審員席の前を行きつ戻りつしながら話します。怪我をした少年と母親は犠牲者だ。実行犯の少年も状況の犠牲者だった。字が読めるようになる前に銃の使い方を覚えた。誕生日を迎える前に死んだ赤ん坊はいうにおよばず。被告の意図は殺すことであった。住所の間違いがあったことは関係ない。銃弾の後には彼の意図があったのだ。法的には殺人であり、社会的には無実の者を殺した罪がある。

言葉を切ったあとに”ため”があって、まず被告をじっと見てから陪審に顔を向ける。ストーンの弁論は、こういう喋っていないところにも説得力がありますね。