Evil Dream (Q: The Winged Serpentより)

8月8日の記事で、Q: The Winged Serpent を見て「こんな声、ほかで聞いたことがない」と衝撃を受けた挿入歌についてです。これに関しては私自身の頭がおかしいような気もするけど、とりあえず正直なところを(笑)

この歌は"Evil Dream" by Michael Moriarty のタイトルで動画サイトに上がってるピアノバーのシーンと同じ曲で、モリアーティの自作です。ただしあっちは撮影現場での生録なのに対し、これはスタジオ録音らしくて印象は全然違います。ものすごく声を張ってて、たがの外れたベン・ストーン状態(笑)

問題の場面は映画の中ほど、ジミー・クインが強盗仲間(奪った宝石をジミーがくすねたと誤解している)にみつかってガールフレンドのアパートから逃げ出す、ほんの1分ほどのシーンです。セリフはありません。

リトル・イタリーにある古いアパート。強盗二人組がドアの外までやってきます。ジミーは銃を持ったままバスルームの窓から逃げ出す。カメラは建物の下からのショットに移り、非常階段の一番上にいるジミーを映す。 昔のマンハッタンっぽい感じの、黒く塗った鉄の階段。

What do you do? という声が響いたとたん、ぞくりとして鳥肌が立ち、血の気が引きました。What you do to make my baby fear?


いったい何だ、この声?


目の前で真っ暗な洞窟がぐわりと開いて、その深ーい底から誰かが叫んでいる。ふらふらと縁まで引き寄せられて、中に跳び込んでしまいそう。



画面では、ジミーが非常階段を必死で下りてくる ............ What do you do? What you do to make my baby fear?  

...... 心臓がゆっくり打つのが大きく聞こえる  .......... Go away, evil dream .......... 地上につながる

梯子段、ジミーがロックを外すと飛ぶように落ちていって、モリアーティはもう少しで手を怪我するところだった ............ 

you better quit messing around ........ 梯子段の一段目に片足をかけたところで、初めて妖しくビブラートがかかる .....

........ cause I'm gonna get myself a gun . .......... やめて。  .......... You better quit messing around

'cause I'm gonna get myself a gun . ........ 夢に銃を向けたところで、誰を撃つというの ........ ジミーは地面に

辿りつき、よろよろと通りを走り出す。歌声はあと数フレーズ続いて、ジミーが追手に捕まったところでふっつり消えてしまう。



・・・・・この歌声、何度聞いても冷や汗が出て貧血を起こしそうな気がします。今まで、歌を聴いてこんな状態になったことはない。似たような悲壮感のある声だとデイビッド・ボウイを連想しますが、あれよりずっと切羽詰まっている。

それともいっそデルタ・ブルースの誰か、サン・ハウスかロバート・ジョンスンか。自分の胸を切り裂いて中にある地獄を見せようとしているかのような、聴く者を一緒にそこへ引きずり込もうとしているような。

聴けばきくほど、穴の縁にしがみついている感じが強くなります。歌が消える直前はスキャットになっていますが、それも尋常じゃない緊張したフレーズです。この後いったいどうなるのか、洞窟の奥にどんな魔物が棲んでいるのか、怖いもの見たさでどうしても確かめたい気持ちになります。

ジャズトリオの"Sweet 'n Gritty" では当然こんなに声を張ってなくて悲痛な雰囲気はありません。また、"Q"のサウンドトラックアルバムというものも存在しないらしい。だからこの声が聴けるのはここの1分だけ。だけど、これ以上つきあったらこちらが穴から這い出られなくなるかもしれないから、覗くのはこれくらいにしておくのがいいかもしれない。


"Q"について言及するのは8月24日の記事についで3回目ですが、まだストーリーについてすら書いてないのでこの後も続くかもしれません。字幕がないので話が完全に把握できてないのもありますが(笑)