Law & Order 1-2 Subterranean Homeboy Blues  「隠された過去」


シャンバラ・グリーン初登場、をこの前間違えていたのでリベンジです。こっちが本当の初登場。

男と女の立場が変わりつつあった当時の社会で、新旧の感覚が対立する話ととらえました。ストーンはたしかに正義を行おうとしているし、理屈は正しいんだけど、その下で古臭い男性中心の感覚が抜けてないのが透けて見えます。それに対して、女性の権利を守ろうとするグリーンが現代的な感覚に訴えて勝つ。ただし、結末はまたストーンがかっこいいこと言って終わりです。

原題がSubterranean Homeboy Blues。ブルースっぽいアレンジのテーマ曲で始まります。地下鉄で黒人の不良二人を撃った犯人の女、どこかで見た気がするのに全然思い出せなくて、調べたらSATCのミランダでした。美人だけどどこか屈託があって暗い女を演じています。

被害者がいかにもな不良、犯人は真面目そうな女性なので、警察でも検察でも意見が分かれます。ローガンは犯人に同情的、グリービーは強硬派。クレイゲンは日和見、ストーンは最右翼、第2級謀殺を主張。シフは正当防衛の意見。ストーン「我々が腰抜けなら街は無法地帯です」おっと、もとのセリフより字幕の方がかっこいいぞ。実際にはこんな感じです。

If we do not prosecute, we are creating a city of vigilantes. A man is dead!
ここで起訴しなければ、この街は自警団の集まりになってしまう。一人死んでるんですよ!

ビネットは犯人の過去の被害を聞き出してきて同情的です。被害者を犯罪階級呼ばわりしてストーンに叱られ、しゅんとする。可哀想に。ポールだっていろいろあるのに、察してやれよストーン。

シャンバラ・グリーンがストーンに会いに来ます。この場面、セリフも早口で難しいんですが、二人のボディランゲージに注目。

世論はこちらに有利と勝ち誇ってみせるグリーン。ストーン、ちょっとムキになって反論しつつ、彼女を壁際に追いつめていく。なんというか旧式な男らしさを発揮して、その場をフィジカルに支配しようとしてるの。夢中になって議論するうち口を滑らせ、「レイプされる女は誘ってるんだ」と取られかねない発言で相手を怒らせてしまう。

ストーンは一瞬しまったという顔をし、今度は優しげな声で話しながら彼女のコートを取って着せてやろうとする。これも伝統的な男らしさですね。グリーンは笑いながらもそれに乗らず、コートを手で取ってさっさと出ていこうとする。それを微妙に体でさえぎり、ドアを開けてやるストーン。あくまで紳士を演じてるんです。見送った後、下を向いてて顔がよく見えないけどニヤけてる?

な、なんか様子が変。グリーンの挑発に乗せられただけともいえるけれど、本当にそうなのか、ストーン?ちょっと疑問がわきます。次のシーンでは机に両脚をのっけて、ぼんやりとメガネの弦をくわえてます。ロビネットの報告を聞いているのか聞いてないのか上の空っぽい・・・おい、何を考えてる?

死んだ被害者は札付きだったことが判明、最後の味方だったグリービーも弱気に。だけどまだ強情なストーン「復讐は正当防衛にならない!」正しいのは正しいんだけど。冒頭陳述で「犯人は被害者を物色していた。怖いなら地下鉄に乗らなければよかった」と発言する。これはいくらなんでも酷い、検事の言とは思えぬ。メディアの格好の餌食となる。

ストーンが馬鹿をやっている間も、ロビネットは地道に仕事、家宅捜索。被告が射撃練習をしていた証拠をみつける。ターゲットの心臓と股間に弾痕。Wow! とか言ってますが、これもなんか感覚古いよなぁ。

法廷。被告への反対尋問でいいところまで追い詰めますが、グリーン提案の事件再現で騒ぎが起こり、傍聴席の様子が報道される。それを見た過去のレイプ未遂の被害者が名乗り出る。

被害者に性犯罪の履歴があったことで殺人での起訴は断念、銃不法所持と無謀行為で。グリーン受け入れない。ストーン、強い調子で主張します。無罪にすれば900万人が銃を持ち歩く。きみと私の仕事は同じだ、市民を守ることを第一に考えろ。ふむ、負けてるくせにでかい声でかっこいいこと言いますね。執行猶予刑で取引。取材陣の前でグリーンと被告、検察の判断をたたえる余裕すら見せる。

いつもの階段でロビネットが「負けたけど体面は保てたし正しいことをしましたね」みたいなことを話しかけると、ストーンがこう答えます。

Really? Feels to me like all we did was make two wrongs seem like a right.
本当か?私には、二つの悪を合わせて一つの正義に見せかけただけのように思えるがね。

「被告の復讐」に「被害者の悪行」が合わさってこんな結末になってしまった、という意味なんだろうと思います。字幕はもっと意訳して「悪に加担した気がする」としてありましたね。「腰抜け」といい、この回は字幕が私の好みよりもこなれ気味な感じでした。


・・・・・中ほどのストーンとグリーンのやりとり、何事かを微妙にほのめかしてあるんだけど、それだけなのでどうとも解釈できる。私としてはその微妙なところを察知してニヤリとできれば十分なんですが、中にはそれで満足できなくて妄想を推し進めるファンもいたりして・・・ま、楽しみ方は人それぞれですね(笑)