サム・ウォーターストン&マイケル・モリアーティ

 
下の二つの話を、ぜひ読み比べてみて下さい。一つ目はThe New York Timesの記事。二つ目は、Q: The Winged Serpent のDVDに入ってるラリー・コーエン監督のコメンタリーから引用。「撮影の順番」について、サム・ウォーターストンマイケル・モリアーティのそれぞれのスタイルが対照的で面白いです。


まず、1994年9月27日、シーズン5の初エピソードが放送されマッコイがデビューした直後の 'Law And Order' Gets A New Face という記事です。

8月のある暑い日、西23丁目の川べりの倉庫では 'Law & Order' の撮影が進行中だった。狭いセットの奥、他のキャストと一緒に、ジャック・マッコイ役について間もないサム・ウォーターストンがいる。撮影では、1つの場面に1時間以上をかける。配置、リハーサル、本番。それぞれの俳優を狙う照明とカメラのセットし直し。これを何度も何度も繰り返す。・・・通常、クロースアップを最初に撮ってもらうのは主役の特権だ。しかし、ウォーターストンは自分の番を最後にすることを選択した。理由は「その方がたくさんリハーサルできるから」と、あるスタッフメンバーが尊敬のまなざしで教えてくれた。やっと順番が回ってきて、ウォーターストンはもう10回以上繰り返したセリフを口にする。「分かったら出て行け」


次、Q: The Winged Serpent 2003年版DVDのラリー・コーエン監督コメンタリー。

私とマイケル・モリアーティで別の映画を撮った時、数人の相手役と一緒のシーンで、彼は「自分のクロースアップを最後に撮ることにして、他の俳優は先に帰ってもらえばいい」と言った。「なぜ?」と私。「相手はいなくていい、自分だけでやりたい」「じゃあ、スクリプト係にセリフを読ませようか?」「それもいらない、全部覚えているし、頭の中でひとのセリフを読んで、自分のセリフを言うから」「目線はどうする」「どこを見ればいいか分かってるから大丈夫」・・・それで1人でやってもらうと、彼は自分のセリフを言い、そこにいない相手役が答えるのに反応して、その動きを目で追い、それで文句なしの完璧な演技だった。彼は、他人の役も自分の方がうまくできるから、全部の役を頭の中でやっているんだ。Law & Orderのパイロット版(1988年)の監督と話したことがあるが、そこでもモリアーティはクロースアップを相手役なしでやることにこだわったそうだ。そんなことをやる俳優はほかにいない。


いかがでしょう。主役は「最初に撮影」が普通なところ、二人とも「自分が最後」を選択してます。でもそこにいたる理由は何という違いでしょうか。そして、その違いが演技スタイルだけじゃなく、かれらの対照的な性格(チームプレイヤーと、エキセントリックな天才型)から来ていることがうかがえます。それでいて、二人とも演技に対するストイックさゆえにそうしていることは共通しているのです。

この話、両方とも今日ぐうぜん発見したものです。それもちょうど主役交代の日に見つけるなんて、びっくりでした。