Law & Order 15-7 Gov Love  「知事の恋人」

 
今ごろになってシーズン15を見ている周回遅れの私です・・・ そしていつもの習性でついストーンと比較もやってしまいます。

同性婚については、先月末に連邦最高裁で1996年の結婚防衛法を違憲とする画期的な判断が出ました。またイギリス議会では2日ほど前に同性婚が承認されたばかり。9年前の制作時との状況の違いが際立って、再放送ながらタイミングもよろしい。

ジェリコ・イバネク登場、出てきた途端に犯人とわかる(笑) 私はこの人のことを4-8「過去から届いた挑戦状」を見るまで認識していなかったけれど、その状態でもやっぱり絶対アヤシイと思ったと思う。それくらい存在感あり。そして弁護士がクリス・サランドン*1

裁判の過程でゲイ・マリッジが焦点に。上記の通り、当時は連邦法が結婚を男女間に限定していました。ただアメリカではいつものことで、この話のようにゲリラ的に同性婚を認める自治体があったり、州によって扱いが違ったりする。そのために、たとえばニューハンプシャーで結婚したカップルがフロリダに引っ越した後で離婚しようとしたら、できないケースもあった(つまりフロリダではそもそも同性間の結婚が無効だから)。連邦最高裁の判断で、そのような状況にも変化が生まれるだろうと期待されている。

今回のマッコイは憎まれ役です。被告側に配偶者秘匿特権を主張させまいとゴリ押しで上訴裁判所から「同性婚は無効」の判断を得ようとする。この場合は被告の夫(両方とも夫だけど)に証言をさせたいだけで、マッコイ自身が同性婚に反対かどうかははっきりしない・・・・・多分違う。というのも立場が違えば正反対の主張をするに違いないから(笑) それと、サザリンが「特権は同性婚には適用外だというの?」と尋ねたときに "It's not relevant what I believe" 「私の個人的信条は関係ない」と答えている。*2

マッコイの強引な手法が成功し、上訴裁判所で首尾よく「現行法のもとでは婚姻は無効」との判断が出る。ついでに「この件は州議会で議論し新しい制度を検討するように求める」と裁定される。番組の政治的な狙いとしては多分ここを言いたかったんじゃないかと思いますがどうでしょう。

ところが殺人事件の裁判では肝心の証人から証言拒否という手痛いしっぺ返しを受ける。これも視聴者としてはなかなか爽快感のある場面でした(笑) ブラッドリーの反撃。

I don't care if I go to jail. We are not second-class citizens, Mr. McCoy. You can't treat us like that!
投獄されようと知ったことか。我々は二級市民じゃない、ミスタ・マッコイ。そんな扱いはさせないぞ!

あーこんな風に憎まれ役を演じられるマッコイ、素晴らしいキャラクターだと思います。ストーンじゃこうはいかないですからね。

同じくゲイ話でストーンが憎まれ役になってたエピソードはあります。ただしレベルが違って、ドラマ内では悪人扱いだけど視聴者からは嫌われずむしろ同情されるという都合のいい役です。

1-3 Reaper's Helper 「死神の使い」は、エイズ患者を死期の苦しみから救おうと殺してまわる男の話でした。裁判の途中で、犯人もエイズであることがわかる。彼に対する同情の世論が沸き起こり、ストーンは検事局の廊下で活動家の男に殴られる。*3

あの頃はエイズ感染=死の宣告だったので、ストーン自身の心情としては(殴られたのもあって)起訴を取り下げたかった。しかし模倣犯が出たことで引っ込みがつかなくなり、「今朝まではただの鬼検事だったのに、これで異端審問官に格上げされてしまった」と嘆いてました。字幕では「鬼検事から極悪人に昇格だな」となっていたセリフです。

結局、ストーンは弁護側に情報を流すという禁じ手で無罪評決に誘導する。むりやりな手口を使っていることは同じなんだけど、視聴者に与える効果は上のエピソードと正反対。

マッコイは「自分の目的を果たすために強引なことをして、なんて傲慢な奴」と思わせる。逆にストーンは「重病人が有罪にならないようにこっそり情報を漏らすなんて、本当はいい奴なんじゃん」と思わせている。

ポイントは、ストーンは「公衆から憎まれる検事」であることは厭わないけれど、マイケル・モリアーティサム・ウォーターストンのように「視聴者から憎まれる検事役」を演じることにはおそらく同意しなかっただろうということ。

これってやっぱりモリアーティの「ええかっこしい」のせいだろうと思うんです。最後のシーンのトボケた演技が可愛くて許してしまうけど。 え・・・・・アマンダは彼が何をやってもOKなんじゃん、って?そ、それはその通りですけどね・・・・・
 
 

*1:そういえばこの人は『大韓航空機撃墜事件』でタカ派ソビエト対策局長をやってました。

*2:字幕はここ「私は古い人間だ」としていたけどなぜそうなるのか不明。翻訳チームもマッコイの個人的立場が曖昧だと感じて、視聴者が混乱するのを防ごうと補足したんでしょうか?だとするとちょっとやり過ぎ感があるなぁ

*3:このエピソードの共演者トリビアは、被害者の父ホランド氏が『バング・ザ・ドラム』の”グース”だということです。